tawashiatsume

植物、主にサボテン・多肉植物。時々登山、時々お酒。

2019年 北アルプス縦走・2日目~鹿島槍ヶ岳を越えて針ノ木岳まで~

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鹿島槍ヶ岳

tawashiatsume.hatenablog.com

 2019年9月北アルプス縦走・2日目、予定は五竜山荘から針ノ木峠までですが、果たして行けるのか、、、。昭文社の地図の地図によると標準コースタイムは計20時間ほど。

 テントや数日分の食料が入った重い荷物を背負っていましたが、2、3年前は普通にこれくらいの時間を行動できていたので、最終的に自分を信じることにしました。また、期間内に槍ヶ岳まで何としても歩き通したいという強い気持ちがあったのも原動力になっています。

 とはいえ、山では基本的に無理は禁物です。何かあっても自分でどうにかできるような準備や経験が必要です。

五竜山荘から夜明け前に出発

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夜明け前に出発。これは日の出の30分前くらい。

 午前3時半に起床し、寒さで凍える中ご飯を作って食べ、テントを畳んで4時半には五竜山荘を出発しました。

 僕の他にも、五竜岳に登る人達が小屋の前で準備をしていました。夏山では早朝出発は普通ですので、これくらいの時間帯でも早過ぎという訳ではありません。本当に早い時は午前2時とか3時から歩き始めます。

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明るくなっていく空を横目に登る。左下の灯りは五竜山荘、右下の灯りは麓の白馬村

 ヘッドライトをつけ、昨日登った五竜岳への登山道をえっちらおっちら登ります。
 太陽が出始めた空は、真っ暗な状態から赤紫色の光を帯び始め、徐々にオレンジ色が強くなっていきます。ダイナミックな空の色の変化も登山の醍醐味の一つではないでしょうか。

五竜岳から鹿島槍ヶ岳へ!

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五竜岳を少し下った場所、岩だらけの斜面。

 日の出前に五竜岳に着き、僕は昨日登ったことと、今日は少しでも時間に余裕を持ちたかったので、一息ついてすぐに次の山である鹿島槍ヶ岳に向かいました。

 五竜岳鹿島槍ヶ岳の間は岩場で有名な尾根で、八峰キレットなどの難所があり上級者向けと言われています。

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五竜岳鹿島槍ヶ岳はこんな感じの岩場が多いです。

 この五竜岳鹿島槍ヶ岳のコースは小屋や水場、いざという時の下山路もほぼないため、上級者向けになっています。

 岩場や鎖場をひたすら越え、目の前にそびえる双耳峰、鹿島槍ヶ岳を見ながら爽快な景色や高山植物を楽しみながら進みました。

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トウヤクリンドウ

 鹿島槍ヶ岳は北峰と南峰があり、五竜岳方面から見ると鬼のような山容に見え、鬼ヶ島のようだと個人的には思います。

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左側はこれから越える岩尾根。右側は双耳峰、鹿島槍ヶ岳

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登山道はとにかく岩の塊や岩がゴロゴロした道を行く

 たまに鎖場や足元が切れ落ちて危険な箇所がありました。

 そのような場所で滑ったりすると、障害物がないので結構下まで滑り落ちると予想される場所もありました。

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難所の1つ。両脇は崩れたり切れ落ちていて、岩の登り降りで越えていく。

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下から鎖場を見上げる。高さ10~20 mほどのこのような岩場を上り下りする。

  このような場所にも1軒だけ山小屋があります。水や食料を購入したり、悪天候の時に逃げこむこともできる重要な山小屋です。

キレット小屋

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五竜岳鹿島槍ヶ岳に唯一ある山小屋、キレット小屋

 キレット小屋は、岩場に囲まれたわずかな平地に建てられた小さな山小屋です。絶壁に囲まれたこんな場所によく建てたものだと感心します。

 キレット小屋まで来ると鹿島槍ヶ岳までもうすぐですが、もう一ヶ所の難所、八峰キレットを越えて鹿島槍ヶ岳まで一気に登り上げなければなりません。

 難所に備えてキレット小屋で休憩をとりました。キレット小屋の前のベンチに座り、目の前に劔岳を望みながら素晴らしい山の景色に癒されながら休みました。

八峰キレット通過

鹿島槍ヶ岳の岩場

 キレット付近は、岩場の幅がわずかな道を縫うように進みます。下は切れ落ちているので、滑らないように注意が必要です。

キレットの道、滑り落ちたらまず助からなそう。

 キレットは漢字で切戸と書かれることもあり、岩を切ったようにV字型に落ち込んでいる岩場の部分を指します。

 V字型の部分は道具を使わずに上り下りすることがほぼできないので、キレットを通らないか、今回のように横から水平移動して通過するしかありません。

奥のV字に落ち込んでる部分がキレット

 キレットの通過自体は10分もかからないのですが、脇がずっと下まで切れ落ちて見えない細い道やハシゴ・鎖の登降もあり、高い所が苦手な方は通過が難しいかもしれません。

鹿島槍ヶ岳への登りから五竜岳を振り返る

 八峰キレットを通過したら、鹿島槍ヶ岳山頂へひたすら登りが続きます。この登りも岩場があり、天気が悪い時に下る際は滑らないよう注意が必要です。

鹿島槍ヶ岳登頂!

鹿島槍ヶ岳の北峰、少し雪が残っている。

 急な登りを終えると双耳峰の間の地点、北峰への分岐点に到着しました。

 北峰は以前登ったので今回はパスし、少し高い南峰を目指しました。分岐点から15分ほどで標高2,889 m、鹿島槍ヶ岳の南峰の山頂に着きました。

鹿島槍ヶ岳南峰の山頂標識

 雲が多い天気でしたが、鹿島槍ヶ岳からの眺望はよく、後ろには越えてきた五竜岳、横には劔岳、前にはこれから目指す槍ヶ岳がはるか向こうに見えました。

 山頂から長野県信濃大町市の麓の街も見えるはずでしたが、この日は雲海の下に隠れていて見えませんでした。

 鹿島槍ヶ岳には、僕がこれから向かう冷池 (つめたいけ)山荘方面から続々と登山者が登ってきていました。

劔岳と左側に立山連峰

これから進む尾根がずっと向こうまで続いている。

 鹿島槍ヶ岳に到着したのが、午前8時半前。素晴らしい景色を見ながらクッキーをほおばり、ここまで概ね予定通りの時間 (およそ標準コースタイムの2分の1)で来ていることを確認しました。

 種池山荘まで頑張って行ってお昼ご飯を食べられれば、何とか針ノ木峠まで今日中に行けそうな感覚がありました。

 種池山荘までは、冷池山荘まで下り、さらに爺ヶ岳まで登ってから種池山荘へ下るという道筋です。「お昼ご飯まであともうちょっと!」と奮起して腰を上げ、ザックを背負いました。

冷池山荘から爺ヶ岳

冷池山荘までは歩きやすく気持ちの良い道

 冷池山荘まではなだらかな登山道を下ります。目の前の広大な尾根を眺めながら歩ける最高のコースです。

 途中にはお花畑もあり、元気を与えてくれます。

チングルマ、花が終わった後は特徴的な綿毛の姿になる。

 鹿島槍ヶ岳から下っていき、樹林帯に入るようになるともうすぐ冷池山荘に着きます。

冷池山荘

 冷池山荘は、文字通り冷池という小さな池の近くにある山荘です。日本百名山鹿島槍ヶ岳に登る登山者がよく泊まる山小屋です。

 冷池山荘で休憩しつつ水を買って補給し、すぐに爺ヶ岳への登りへ取り付きました。

爺ヶ岳を見ながら登る。

 爺ヶ岳はパッとしない山ですが、標高は2,600 m以上ありつつも登りやすく、またライチョウが比較的多い山です (僕も以前、爺ヶ岳で見ました)。

 爺ヶ岳に登りながら、ふと息が切れてつらくなった時、立ち止まって振り返ると悠然とたたずむ鹿島槍ヶ岳の姿が見えました。

 ただつらいだけが山登りではない、素晴らしい景色が気持ちを支えてくれることもあると、そう思える瞬間でした。

爺ヶ岳付近から見る鹿島槍ヶ岳

 爺ヶ岳の山頂を踏めばもうすぐそこに種池山荘が見えました。このあたりから天気もよくなって青空が広がり、軽快な足取りで種池山荘へと下りました。

正面の小屋が種池山荘、バックの山は劔岳立山連峰

種池山荘で特製ピザ!!

 種池山荘に到着したのが11時半頃で、お昼ご飯にはちょうどよい時間でした。

 種池山荘は、麓から登ってくる登山者で大変賑わっていました。夏季は特製ピザを焼いているというので、迷わず注文しました。

 写真撮っていませんが、山の上で食べる焼きたてのピザは格別で、午後も頑張って歩こうという大きな励みになりました。

種池山荘から新越山荘へ

 概ね予定通りに来ているとはいえ、時間にそれほど余裕はなかったので休憩もほどほどに、針ノ木峠を目指して出発しました。

 針ノ木峠へは、まず新越山荘までなだらかな尾根道を歩き、そこからいくつか山を越えて針ノ木岳に登り、針ノ木岳から下ってすぐに針ノ木峠にゴールという道筋です。

種池山荘から新越山荘へは人が少なく静かな道だった。

 種池山荘はあんなに人で賑わっていたのに、新越山荘方面の道へ足を踏み入れてから人がばったりいなくなりました。

 予想はしていたけど、あまり人気のあるコースではないようです。針ノ木峠までは小屋1軒のみ、水場なし、エスケープルートなし、それでいて通過に結構時間がかかりそうでつらいコースのようでした。

 でも実際歩いてみると、鹿島槍ヶ岳劔岳など百名山の眺望がよく悪くはないんじゃない?と思うコースでした。少なくとも新越山荘までは。

鹿島槍ヶ岳

劔岳

 眺望を楽しみながら歩いて行くと、やがて小さな小屋が見えてきて、それが新越山荘でした。時間帯も午後で登山者は少なく、小屋の周りも静まり返っていました。

新越山荘付近の道

新越山荘

 地図を見ると新越山荘から山をいくつも越えていき、時間がかかる核心部と思われたので、休憩して気合いを入れました。

 先に針ノ木岳へのコースの感想を言ってしまうと、この区間は上り下りが激しく非常にきついコースでした。標高差200 mを登っては標高差200 mを下る、、、ということを何回も繰り返すコースで、疲れている午後に歩いたこともあり非常につらかったです。

鳴沢岳、赤沢岳、スバリ岳と越えて針ノ木岳

 新越山荘からは、まず鳴沢岳への急登をしたかと思うと、下ってまた赤沢岳に登り返す。赤沢岳から下ってまたスバリ岳へ登り返しました。

鳴沢岳から下ったあたりから赤沢岳を見上げる。下ったのにあそこまでまた登り返すのかとがっくりした。

 また、鳴沢岳付近から針ノ木岳はすぐ向こうに見えていて、距離は近そうだったのにも関わらず、アップダウンが激しいせいで全然近づかない感覚も苦しかった記憶があります。

正面奥の右の山が針ノ木岳。近そうに見えるけど、、、

 天気はよく、ずっと木がない尾根通しだったので直射日光にさらされながら歩きました。

 鳴沢岳~スバリ岳の道は登山道に熊のフンが頻繁に落ちていたので、人があまり通らないことが予想されました。そりゃ、こんなにつらもんね。

赤沢岳山頂、すでにここでかなりきつかったのを覚えている。

 赤沢岳に到着したのが15時前で、日が傾き始めて徐々に暗くなってきました。

 赤沢岳から今日の幕営地である針ノ木峠まで標準コースタイムで3時間ほどでしたが、日の入前の17時には到着したかったので少し焦りました。

目の前に大きくそびえるスバリ岳と針ノ木岳

 また、この時間帯ではエネルギー不足から歩くスピードが落ち始めていました。

 飴やクッキーなどは適宜食べましたが、朝4時半から歩いているので行動時間が10時間を超えていて、多少のエネルギー不足になるのは避けられませんでした。

スバリ岳、白い砂の山でキレイ。

 実際は、エネルギー不足以上に、大きく下ってからそれ以上に目の前の大きな山に登り返さなければならないという精神的なつらさが堪えました。

 あとどれくらい、何回このような登り下りをするかわからない状況がつらかったです。

スバリ岳山頂、ここら辺は全く登山者に会わなかった。

 標高2,752 mのスバリ岳は白い砂の山でコマクサも咲くよい山ですが、つらかった記憶が強いです。

 何より、スバリ岳の山頂からさらに奥に高くそびえる針ノ木岳。しかも一回下ってからまた針ノ木岳に登り返すというハードさ。

スバリ岳から見る針ノ木岳

 これが最後の登り返しであったのと、日の入が近かったことから5分ほど休んですぐに針ノ木岳を目指しました。

針ノ木岳山頂、白い砂の山頂に立つ標識が印象的だった。

 1時間はかからなかったと記憶していますが、ヒーヒー言いながら登ると、白い砂に覆われた平らな針ノ木岳の山頂に着きました。標高は2,820 m。信濃大町方面の麓は相変わらず雲の下でしたが、反対側の黒部湖ははっきりと見えました。
 キレイな山頂の景色に少し感動するとともに、達成感よりは「やっと登りが終わった」という安堵感が強く押し寄せました。

越えてきた爺ヶ岳と雲海

針ノ木岳方面から見るスバリ岳

今日越えてきた鹿島槍ヶ岳方面を振り返る。

 針ノ木岳に着いて安心するのも束の間、日が暮れる前に針ノ木峠へ下って日暮れ前にテントを張ることが目標です。

2日目の幕営地、針ノ木小屋

針ノ木小屋

 20分ほど下ると針ノ木峠と針ノ木小屋が見えてきました。

 小屋に到着したのは17時過ぎ。何とか日暮れ前に到着!

 テント申請をして水を買い、急いでテントを張って夕食のカレーを作りました。

3日目はどこまで行けるか?

 夕食を食べながら、3日目はどうしようか考えました。

 3日目の予定コースもかなりきつく、計画通り針ノ木小屋から三俣蓮華小屋まで行くとすると2日目と同じくらいの行動時間かそれ以上でした。今日で12時間歩いて中々きつかったから、三俣蓮華までは厳しいかな、途中の烏帽子小屋止まりかななどと思いながら寝る準備に入りました。

 とりあえず明日も朝早く起きて頑張ろうと気持ちを単純化し、泥のようにシュラフで眠りました。

(2019年 北アルプス縦走・3日目へ続く)

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