tawashiatsume

植物、主にサボテン・多肉植物。時々登山、時々お酒。

2017年 日本アルプス縦走・8日目~土砂降りの中、駒ヶ根から南アルプスの仙丈ヶ岳へ~

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南アルプス仙丈ヶ岳の山頂

 日本アルプス縦走もいよいよ後半に突入。8日目です。

 この日は南アルプスに突入する日で長丁場のため、早朝出発を目指して0時には目をパッチリ覚ましていました。

 昼間から夕方にかけて寝ておいたので眠気の方は問題ありませんでしたが、天気はひどい土砂降り、、、。7日目より雨が強いように感じました。

 午前1時出発を少し延長して、天気が回復しないかな~と淡い期待をしていましたが、何も変わらなそうなので腹を括って午前2時前に駒ヶ根高原を出発しました。

天竜川まで下りて中沢峠まで登り返し

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中沢峠手前、舗装路は大雨で川のようになっていた

 深夜の暗闇、土砂降りの中、舗装路をひたすら歩いて駒ヶ根駅方面へと下っていきました。

 レインコートに大粒の雨が打ち付けられてボコボコ打撃音がなるほどの大雨で、靴は10分と待たずに中までびしょ濡れ。

 駒ヶ根駅からさらに下り、天竜川にかかる橋まで降りました。一番標高が低い地点で標高600 mほどだったと思います。

 ここから標高3,000 mの仙丈ヶ岳まで登り返すのは骨が折れるなぁ、、、。でも当時はそんなことを考える余裕すらもなく、ひたすら歩いていました。

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中沢峠への道の途中の集落

 天竜川にかかる橋から今度は登りに転じて、中沢峠を目指して緩やかに登っていきます。

 中沢峠への道の途中で夜が明けて、雨も止みました。雨が止んだところでちょうど自販機があったのでコーラを買って一休みしました。

 この旅では自販機を目にする機会もさほど多くはなく、エネルギーも常に切れがちなので、自販機を見かけたらほぼコーラを買って飲んでいました。

 多い日だとコーラを3、4本は飲んでいましたが、太るどころかそれでもエネルギー不足に陥ってしまいました。

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中沢峠への道の途中、山の中に入ってきて霧が濃くなった

 登っていくとやがて集落は途切れて民家が見えなくなり、山の中に入っていきました。

 山に登るにつれて再び雨が降り始め、出発時のような土砂降りになってしまいました。

 午後は雨が止むかなと朝には思いましたが、朝からこの調子だと一日中天気が悪そうな予感がしました。

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中沢峠手前、標識には仙丈ヶ岳登山口の長谷まで16 kmとある

 土砂降りで舗装路を大量の雨がドバドバ流れ、川のようになりました。

 山に登るにつれ雨は強くなっていき、舗装路上の水量も増えて、「これは大雨警報がでているのでは?」と思うほどの大雨に。

 この時点では休んだり等どうしようもないので、ひとまず中沢峠を越えて仙丈ヶ岳登山口まで行ってみることにしました。

中沢峠を越えて仙丈ヶ岳登山口まで再び下る

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中沢峠であることを示す標識

 急な舗装路を登っていくと平らになり、道の脇に中沢峠を示す小さな標識が立っていました。駒ヶ根高原を出発して約5時間経過し、午前7時に中沢峠に到着。

 山の中の小さな峠なので自販機などはなく、標識が立っていなければ峠だとわからないような場所でした。

 ここでは休まずに、中沢峠から仙丈ヶ岳登山口のある長谷の市野瀬集落を目指して下りました。

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分杭峠 (大鹿村方面)の分岐、市野瀬へは左へと下った

 中沢峠を下っておよそ1時間ほどで市野瀬集落に到着。雨宿りができる公民館があり、自販機もあったのでここで一休み。

 市ノ瀬集落は標高が900 mを切り、ここから標高3,000 mの仙丈ヶ岳へと一気に登ります。

 これから登るコースと標準タイムを確認。天気が悪いからどこまで登れるか。

 幕営地も水場も多くないエリアなので、様々な可能性を想定して頭に叩き込みます。

仙丈ヶ岳登山口から地蔵尾根を登る

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仙丈ヶ岳の地蔵尾根の登山道、中間地点程の針葉樹林帯

 市野瀬公民館のある市野瀬集落から三峰川を渡って急な舗装路を登ると、民家が点在する柏木集落に着きます。

 駒ヶ根高原からの舗装路歩きもここで終わり。駒ヶ根高原からおよそ30 km以上はあると思います。

 柏木集落の民家脇に仙丈ヶ岳の地蔵尾根の登山口があります。ここからいざ南アルプスへ!、ということで気合いを入れ直して登り始めました。
 地蔵尾根の登り始めは、松などが混ざる広葉樹林帯です。

 土砂降りの中、食料などを補給して重くなったザックを背負ってえっちらおっちら登りました。

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仙丈ヶ岳の地蔵尾根の中間地点より上の針葉樹林帯

 雨脚は止むどころか、樹林帯の中を歩いているのにレインコートの中まで浸水するほど強くなりました (後から調べると台風が来る影響で大雨になっていたようです)。

 途中、脚を止めて、

 

「この悪天候では登らないで引き返すべきでは?」

南アルプスに本格的に入山すると、エスケイプするのも一苦労、、、」

 

などなど、自問自答した時がありました。

 立ち止まると急速に身体が冷え始め、停滞してゆっくり考える余裕はなく、今ここで決断するしかありませんでした。

 「今回は諦めて再挑戦すればよいでのは?」という思いも過ぎりました。

 しかし、それよりも「今ここでリタイアしたら必ず後悔する」「これ以上行けない・できないという所まで行ってからリタイアしよう」という気持ちの方がが勝りました。

 本来登山でこのような判断はあまりよくないのですが、最終的には「悪天候でも行きたい」「チャレンジしたい」という自分の気持ちに正直になることにしました。

 普通は、「ここで引き返して、再度南アルプスだけ登ればよいのでは?」と思うところですが、『一筆書き』にこだわりがあった頑固な自分には「ここで中断したら、また日本海から歩き直し」という気持ちが強く、後押しになりました (笑)

悪天候の中、地蔵尾根を登って仙丈ヶ岳

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仙丈ヶ岳の地蔵尾根の上部、高山帯の少し下の背が低い針葉樹林帯

 悪天候で地蔵尾根の写真があまり撮れていないのですが、地蔵尾根を登っていくと広葉樹林帯から徐々に鬱蒼とした針葉樹林帯へと変わっていきます。途中、草原やシダが生い茂る森もあり、環境の移り変わりも面白いです。

 熊が出そうな深い針葉樹林になると (両俣小屋の人曰く、地蔵尾根は実際に「熊の巣」と言われるほど熊が多いみたいです)、地蔵尾根中間地点の松峰小屋へ分岐に到着します。

 松峰小屋には以前泊まりましたが、近くにある枯れそうなほど細い水場と古い避難小屋が印象的でした。

 松峰小屋での停滞を考えるも、時間はまだ早かったので一気に仙丈ヶ岳へ登り詰めてしまうことにしました。

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地蔵尾根上部から駒ヶ根方面を振り返る、天気は悪い~

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仙丈ヶ岳の地蔵尾根の上部の高山帯

 松峰小屋分岐を過ぎて、さらにひたすら針葉樹林の急登を登っていくと、徐々に樹の背丈が低くなっていきます。

 そうなると地蔵尾根の上部の高山帯は近いです。草原地帯やダケカンバなどの広葉樹が出てくると、高山帯はもうすぐそこ。

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仙丈ヶ岳の地蔵尾根の上部の高山帯、岩稜も少しある

 高山帯に出ると、ハイマツに覆われた見晴らしのよい尾根道に変わり、三角形の仙丈ヶ岳の山頂が見えてきます。

 見通しのきかない深い樹林帯の長い道を登ってきたので、仙丈ヶ岳を見ると感激します。

 雨も止んできて、山頂まであともう少し、と踏ん張りました。

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地蔵尾根から眺める仙丈ヶ岳の山頂

 地蔵尾根を登っていくと、北沢峠からくる登山道と合流します。

 仙丈ヶ岳に登る人の大半は、登りやすい北沢峠からの登山道を往復します。地蔵尾根は長いし途中に水場や小屋が乏しいので登る人は少ないです。

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地蔵尾根最上部、北沢峠からの道との合流点が近い

 仙丈ヶ岳の山頂が見えるようになったら合流点までもうすぐ、さらに合流点から山頂までもすぐです。

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北沢峠からの道の合流点

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合流点から山頂まではもうすぐ!山頂直下にカールがある

 北沢峠からの登山道と合流すると、木のポールなどが出てきて一般登山道の見た目に変わります。

 天気がよければ登山客でにぎわうコースですが、あいにくの天気で他の登山者は0、、、。

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合流点の少し下に仙丈小屋がある、でもテントは張れない

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雲の切れ間から白砂の甲斐駒ヶ岳が見えた

 雨も束の間ですが止み、向かいの甲斐駒ヶ岳などが雲の切れ間から顔を出しました。

 でも、立ち止まるとピュウピュウと冷たい風が吹きつけて濡れた身体を冷やします。休憩せず、もうちょっと!と気合いをいれました。

仙丈ヶ岳に登頂!

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仙丈ヶ岳山頂!

 午後2時半前、標高3,033 mの仙丈ヶ岳に到着しました。

 駒ヶ根高原を午前2時頃出発したので、大体12時間ほどかかりました。

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地蔵尾根

 荷物が重かったことと悪天候で、予定より時間がかかってしまいました。

 早く着けば熊ノ平小屋まで行けるかなと考えましたが、天気も悪いので両俣小屋を目指すことにしました。

 また、本来ならお昼ご飯を食べるのですが、いつ天気が悪くなるかわからず、長時間止まると身体が冷えて低体温症になる恐れもあったので、お昼ご飯は無しにして行動食で食いつなぐことにしました。

両俣小屋を目指して縦走路に入る

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時折高山植物が癒してくれたり、、、

 8日目の宿泊地になる両俣小屋は、仙丈ヶ岳から南アルプスを南下する縦走路 (仙丈ヶ岳塩見岳の間の縦走路の長い尾根は仙塩尾根と呼ばれます)から少し降りた場所にある小屋です。
 仙丈ヶ岳から、予定していた縦走路を野呂川越という場所まで下って、そこから仙塩尾根を離れて30分~1時間ほど下った川沿いに小屋があります。

 野呂川越までも尾根歩きがやや長いので、何とか日暮れ前に小屋に着くべく休みもそこそこに出発しました (休み過ぎると身体が冷えちゃいますしね)。

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仙丈ヶ岳山頂、ここからまた天気が悪くなった

 仙丈ヶ岳から岩稜沿いに30分も行くと大仙丈ヶ岳です。大と付きますがこちらの方が標高が低いです。山頂はこっちの方が広いかな?

 地蔵尾根上部に着いた頃から雨が止みましたが、大仙丈ヶ岳付近から雲が立ち込め再び雨が降り出してしまいました。

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少し下ったところから大仙丈ヶ岳を見る

 雨が降り出し、高山帯なので風が強く、真夏とは言えこのコンボは体感温度が10℃かそれ以下になってしまいます。

 雨は止まないと判断して、ここから両俣小屋まで休憩なしで行くことにしました。身体が冷えないよう、立ち止まっても1分くらいにして常に身体を動かして温めました。

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仙塩尾根の道、先は雲で霞んでいる

 仙丈ヶ岳塩見岳の仙塩尾根は長い尾根です。標準コースタイムでは、仙丈ヶ岳から塩見岳まで縦走するのに2日はかかるでしょう。

 しかも、南アルプスは高標高地まで針葉樹林が発達するので、仙塩尾根は眺めのきかない針葉樹林の道が長く、人によっては退屈と感じるかもしれません。

 しかし、人の少ない深山の針葉樹林こそが南アルプスの山の魅力でもあります。苔むした林床の倒木やフカフカの苔マット、大量に生えるシダ、、、これらの景色がずっと続くのは南アルプスならではです。

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仙塩尾根、時たま背が低いハイマツに覆われた岩稜などでは眺めがよい

 話がそれましたが、大仙丈ヶ岳から仙塩尾根を下り徐々に高山帯から亜高山帯の針葉樹林へと変わっていきます。

 途中途中にいくつか名前の付いたピークを通りますが、針葉樹林の中で眺めがないことが多かったです。独標ピークは眺めがよいですが。

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途中にある高望池

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仙塩尾根の針葉樹林帯の道

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途中、通過したピーク

 途中には高望池という小さな池があり、尾根から20分ほど下ると水場があるようで、一応ビバーク地点の一つになっています (昔はテント場だったようです)。

 とは言え、水が枯れることもあり、また現在では幕営指定地でないので、緊急時以外は幕営すべき場所ではないでしょう。

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シダが生い茂る針葉樹林の道

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独標、晴れていれば眺めがよい岩稜

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小さい独標の標識がある

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横川岳、ここまで来ると野呂川越まであと少し

 針葉樹林の尾根をひたすら歩いて行くと、やがて野呂川越に着きます。

 野呂川越から尾根を離れて針葉樹林の道を川まで下り、川沿いに平らな道を歩くと両俣小屋の屋根が見えてきます。

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両俣小屋手前の川沿いの道、大木が林立する林

8日目の宿泊地、両俣小屋に到着!

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両俣小屋、静かな場所でよいです

 両俣小屋に18時前に到着!日暮れ前に到着できてよかったです。

 駒ヶ根を出発して16時間経過。午前0時頃朝ご飯 (?)を食べてからここまで行動食のみで来たのでお腹がかなりすきました。

 両俣小屋でテントの幕営申請を済ませ、テントを張ろうかな~と河原を歩こうとすると、小屋の人が「夕食一緒に食べませんか?」声をかけてくださいました。

なんと両俣小屋で夕食を頂けた!!!

 ありがたい!とご厚意に甘え、テントを張ってから小屋へ向かいました。

 話を聞いてみると、この悪天候で小屋止まりの人がキャンセルして食料が余っているとことでした。

 また、テント申請の帳簿に出発地を駒ヶ根だか駒ヶ根駅と書いたので、それを見たトレイルランをしているお兄さんが声をかけてくれたとのこと。

 僕の他には、小屋の女将さんとその息子さん、北岳に登りに来たという女性2人とあとはトレイルランお兄さん1人。

 お兄さんは僕と同じように日本アルプス縦走を目指してハードなトレーニングをしているそうで、話はとても面白かったです。他の方も中々面白い方で、楽しい夕食でした。

 山を登っていたらお兄さんとはまたどこかで会うんでないかな?そんな感じがしました。両俣小屋にもまた行きたいですね。

8日目は南アルプスの両俣小屋まで

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オレンジの丸が8日目の宿泊地、緑色の線がこれまで進んだ道のり

 8日目は南アルプスに登り、仙丈ヶ岳に登頂後、両俣小屋に宿泊しました。

 9日目の予定は、両俣小屋から縦走路に登り返し、塩見岳から三伏峠を越え、荒川岳手前の高山裏非難小屋まで行く予定です。

 9日目も標準コースタイムで見ると8日目と同じくらいハードです。行けるのか不安もありました。

 また、両俣小屋での夕食後、テントに戻って靴と靴下を脱ぐとこれまでで一番というくらい脚がふやけて心配になりました (足首から下が全部真っ白になってました)。勿論、登山してたこともあって脚が痛かったです。

 16時間も濡れっぱなしの靴を履いていたので当たり前なのですが、これは明日までに元に戻るのか?と心配になりながらシュラフに潜って寝ました。

(2017年 日本アルプス縦走・9日目へ続く)

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