tawashiatsume

植物、主にサボテン・多肉植物。時々登山、時々お酒。

2017年 日本アルプス縦走・9日目~南アルプス塩見岳を越えて三伏峠へ~

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南アルプス塩見岳付近、この日は雲が多く不安定な天気だった

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 9日目、前日の疲れあってか、予定より遅めに起床。

 前日に小屋で少しお酒を頂いたからかな。

 と言っても、午前4時くらいには起きました。天気は悪くなさそうでした。

 明るくなっていく河原で静かに朝ご飯を作って食べました。昨日の小屋の単独のお兄ちゃんは、すでにシェルターを畳んで下山した模様。早いなぁ。

 ご飯を終えて荷造りをしていると、小屋から昨日の2人の女性が出てきて北岳方面に登るところでした。「お気をつけて」と言葉を交わして、元気そうに登っていく姿を見送りました。

 さて、自分も頑張らないと。南アルプスの山脈をひたすら南へと縦走するのみ。

仙塩尾根に登り返して塩見岳を目指す

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仙塩尾根、雨は降らなかったけど微妙な天気でした

 午前5時過ぎには両俣小屋を出発し、まずは昨日降りた尾根の地点、野呂川越まで登り返しました。

 人の気配がないひっそりとした朝の針葉樹林の中を黙々と登ります。ひんやりとした冷たい空気が肌を横切り、登りで汗ばんだ身体をツンと冷やします。

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仙塩尾根の針葉樹林の登山道

 野呂川越まで登り、やっと仙塩尾根に乗っかりました。
 野呂川越からは昨日来た方向とは逆方向、南の方向へと尾根を進みました。

 まずは、100名山の間ノ岳方面へ行く分岐点である、三峰岳 (みぶだけ)へと緩やかな登り道を登っていきました。

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針葉樹林の道、フカフカのマットのようになっている所もある

 三峰岳までは深い針葉樹林の尾根道をひたすら歩きます。

 コメツガなどの葉が堆積した登山道はフカフカしていて、針葉樹林の林の独特な香りも相まって心地よい空間です。

 南アルプスは標高が高い地点まで写真のような針葉樹林に覆われていて、湿気が高く水分も多いためか標高が高い場所でもランやシダなどが豊富に生えています。

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針葉樹林に生えるシャクジョウソウの実 (多分)

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倒木も苔むして中々腐らず、針葉樹の若木すら生えている

 針葉樹林帯を登っていくと、徐々に樹の高さが低くなってきて高山帯に移り変わっていきます。

 樹の高さが背より低くなったところで、三峰岳が見えました。

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三峰岳を眺める

 朝もやのような雲に包まれた三峰岳。

 うーん、今日も朝からこんな感じだと天気は回復しないかな。

 お天道様の気まぐれを人間が考えても仕方ないので、昨日の土砂降りでたっぷり雫がついたハイマツをかき分け、びしょ濡れになりながら三峰岳まで一気に登りました。

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三峰岳のすぐ下。ほぼ高山帯。

 急坂になり、ハイマツもまばらな岩がちの高山帯の道になっていくと三峰岳をもうすぐそこです。

三峰岳に到着!

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三峰岳の標識

 午前8時15分頃、三峰岳に到着!

 この三峰岳、ピークとしてはあまり目立たないため、分岐点という印象でした。

 ここまで来るのに予定よりだいぶ遅れてしまいました。両俣小屋の女将さんが言うには、9日目から10日目の午前までは天気悪くなさそうとのことだったので、その間にどこまで進められるか。

 ともあれ、実際にできることはエネルギーを補給してひたすら歩くだけ。

 三峰岳で少し休憩して、塩見岳を目指しました。

長い仙塩尾根歩きの後半戦

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三峰岳を少し下ったところのガレ場

 塩見岳へ!と言いましたが、三峰岳からもまだまだ長い仙塩尾根の道が続きます。
 まず、熊ノ平小屋に降りて、さらにいくつかの山を越え、最後に塩見岳へと一気に登るのが仙塩尾根の後半の道のりです。

 三峰岳を少し下ると、ガレた岩場に出ました。

 その頃にちょうど雲が薄くなり、ほんの10分ほどでしたが青空が広がりました。

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モヤのような雲の先にズッシリと構える間ノ岳が、、、

 中央アルプス木曽駒ヶ岳に登った7日目の日から天気が悪く、ここまで実質青空を見れていなかったので、わずかな時間の好天でもつらい気持ちが和らぎました。

 下ってきた三峰岳の方向を振り返るとズッシリとした大きな山容の間ノ岳の姿がうっすらと透けて見えました。

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後から考えるとこの4日間で唯一の青空でした。

 このような間ノ岳の姿を眺めていると、1つ1つの山の大きさが広く大きいのが南アルプスの山の特徴だと思います。

 少しの間、脚を止めて景色を眺めていましたが、周りから雲が立ち込めて再び曇り空に戻りそうでした。

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向かいに見える尾根は白峰南嶺へ続く長い尾根

 束の間の青空と山の素晴らしい景色に元気を頂いて、少しでも早く先へと進むべく、再び歩き出しました。

 進行方向左側には、間ノ岳から農鳥岳、白峰南嶺、笊ヶ岳へと連なる南アルプスのもう1つの長い尾根が見えましたが、雲ですぐに隠れてしまいそうでした。

熊ノ平小屋を経てさらに南へ

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熊ノ平小屋付近から一瞬間ノ岳が見えた。

  三峰岳から下っていき、午前9時頃、針葉樹林の中にポツンとある熊ノ平小屋に着きました。

 熊ノ平小屋はキレイな小屋で、小屋の前のテラスが良い場所でした。

 少々休憩し、水を汲んでお菓子を買い出発しました。

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新蛇抜山付近の展望がよい (はず)の場所

 安倍荒倉岳、新蛇抜山などのピークを越えながら、仙塩尾根を南へと進みます。

 針葉樹林の中を歩いたり、針葉樹林が低くなって見晴らしがよい場所に出たりと少し景色の変化のあるコースでした。

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向かいの尾根のすぐ上の空に厚い雲が、、、天気は回復しなそう

 仙塩尾根は静かなコースで、有名なコースほど見どころはないかもしれませんが、天気の良い時にもう一度歩きたいなと思いました。

 人が少なくて山や森が深い南アルプス雰囲気が好きな人は好きなコースかもしれません。

荒川岳でゆっくりお昼休憩

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荒川岳付近の眺めがよい場所

 さて、塩見岳の手前の北荒川岳というピークに到着しました。

 時刻は確か11時過ぎだったと思います。

 予定よりだいぶ遅れていて、当初予定していた高山裏避難小屋まで行くのは厳しそう (午前中で速度が出せないのに、午後にスピードアップするとは思えませんでした)。

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荒川岳の眺め良い場所でお昼ご飯にしました。

 日が暮れるような遅い時間の到着なら高山裏非難小屋まで行けるかもしれませんが、途中にあった登山者から「高山裏のオヤジは厳しいから、到着遅いと叱られるよ。三伏峠止まりにしておきな。」と言われたこともあり、この時点で今日は三伏峠にテント泊することを決めました (その後、高山裏非難小屋の管理人は新しい人になったとも聞きました)。

 前日はかなりきつかったので、今日は無理をしないでおこうと思いました。

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可憐な高山植物を見ながらご飯を食べました。

 三伏峠までならゆっくり歩いても余裕を持って到着できるので、気分が楽になりました。

 北荒川岳のただっぴろい場所でラーメンを食べ、景色を見ながらのんびり休みました。

仙塩尾根の最終部分、塩見岳

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荒川岳の広い展望地、以前はテント幕営地だった (今はテント幕営禁止)

 12時過ぎまでゆっくり休んで、最後の塩見岳への登りに取り掛かることにしました。

 北荒川岳の標高は2,698 m。塩見岳の標高は3,047 mなので、約350 mの標高差を登ります。

 北荒川岳からは高山帯のガレ場の道を登っていきます。

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荒川岳から少し下ったところ。幕営禁止の標識が立っていた。

 北荒川岳付近は、崩壊地や草原地帯で景色がよいところです。

 昔の地図には北荒川岳の東側に水場を示すマークとテント幕営地のマークがありますが、現在では北荒川岳でのテントの幕営は禁止されています (原則、指定地以外でのテント幕営は禁止です)。

 この少し先の雪投沢も以前はテント幕営地であったのですが、幕営地の下に水場があって汚染され、小屋もないことから幕営禁止になったということのようです。

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仙塩尾根のハイマツ茂る道。快適な登山道。

 塩見岳に近づくにつれて、背の低いハイマツが茂り始め、岩が露出したガレの道へと変遷していきます。

 ここら辺の道は天気がよければとても気持ちのよい道だと思います。

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北俣岳の長い尾根

 標高を上げていくと正面に塩見岳の姿が見えてきます。

 塩見岳は双耳峰であるため、南アルプスの他の山から見ると台形の形をしていてわかりやすいです。

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雲に包まれたり、少し晴れたりと不安定な天気だった。

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雪投沢の源頭部の面白い模様

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尾根のすぐ下まで模様が続いている

 途中、雪投沢という沢の源頭部が、ハイマツの茂みと砂利の露地によって作り出された面白い模様になっていることに気が付きました。

 あそこが以前のテント幕営地だったのかな、、、。

 水場があるようですが、尾根から往復30分とのことで時間がもったいないのでスルー。尾根から水場まで時間がかかることは南アルプスではよくあることです。

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北俣岳方面の尾根。今回は行かないけど登りに行きたい。

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奥にさらに長い尾根が、、、蝙蝠岳方面。

 ガレた道を登っていくと、北俣岳方面の尾根の分岐に差し掛かります。

 蝙蝠岳を経て二軒小屋へと行く、この長大な尾根のコースはまだ通ったことがないので、いつかは登りたい!と思いながら分岐を過ぎて塩見岳へ最後の一登り。

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塩見岳へ最後の登り

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塩見岳の山頂が見えてきた。

 塩見岳の直下までくると、ザレ場から高山植物が生い茂る道に変わりました。

 塩見岳は100名山で自生する高山植物も多くキレイです。

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小さなアザミ

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チシマギキョウ

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様々な高山植物

塩見岳に到着!

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塩見岳の西峰

 13時半頃、塩見岳の山頂に到着!

 塩見岳は西峰と東峰の双耳峰からなり、東峰の方が数メートル高いです。

 天気が良ければ360度の展望があるのですが、この日は雲に包まれて何も見えず。

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塩見岳から見る仙塩尾根の方?それとも三伏峠の方?

 普段は、狭い山頂の塩見岳は100名山ゆえか沢山の登山客で混雑しているのですが、時間がやや遅いからか、天気が悪いから数人しかいなかった記憶があります。

 塩見岳で少し長めに雲上の休憩を楽しんでから、本日の幕営予定地の三伏峠に向かいました。

三伏峠へ!

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塩見岳山頂直下の岩場の登山道

 塩見岳の山頂一帯は岩場になっていて、山頂直下の登山道は急な岩場の道です。それほど危険ではないですが、連日の疲れもあるのでゆっくり下りました。

 このあたりは岩場は高山植物も豊富に咲いているので、ゆっくり植物を見ながら歩くのにはよいです。

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塩見岳は種々の高山植物が見られる。

 山頂直下の岩場の道を通過し終わると、ハイマツが茂る道を下り塩見小屋の屋根が見えてきます。

 塩見小屋は小さい小屋で、テント泊はできず、水場へも往復30分くらいかかるので、休憩せずに通過。

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三伏峠手前の本谷山が見えた。

 塩見小屋を過ぎると三伏峠までは針葉樹林帯のなだらかな道を歩くだけなので、楽です。

 途中、塩見新道への分岐を見送り、針葉樹林帯の中へ入ります。

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三伏峠までの尾根道。雲は厚く、中々晴れなかった。

 後はゆっくり歩くだけで余裕を持って三伏峠に着くのですが、針葉樹林帯に入ったあたりから歩く速度が極端に落ちました (と言っても標準タイムよりは速かったようです)。

 後から考察すると、それまでの毎日の過酷な登山に加えて、8日目が特別ハードだったのでエネルギー切れと寝不足を引き起こしたのだと思います。

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針葉樹林の道、なだらかで歩きやすい。

 歩こうとしてもスピードが出ない。それに加えて、食事を抜いていないのにそれまで感じなかったような強い空腹感、非常に強い眠気に襲われました。

 休憩して座り込んでしまったら、寝てしまってしばらく立ち上げれない気すらしました。三伏峠まではきつい所はないはずとわかっていたこともあって休まずに歩き続けることにしました。

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気持ちの良い針葉樹林帯の道

 写真を見ると、木漏れ日が差していて気持ちの良さそうな道なのですが、当時は非常につらくあまり記憶にありません (通ったことは覚えているんですけどね、、、)。

 脚を止めて休まないことだけを必死に考えて、力が入らない身体を動かすだけで精一杯でした。霧が出てきて冷たく、身体を冷やさないためにも動き続けるのがベストでした。

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本谷山

 なだらかな尾根道や斜面の道を登り降りしていると、少し開けた本谷山の山頂に到着しました。

 ここまで来れば後は下るだけで三伏峠小屋まで着きます。事故を起こさないために油断はできませんが登りがないことに安堵を覚えました。

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針葉樹林と草原が混ざったような道。良い道ですよ!

三伏峠に到着!

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三伏峠小屋

 予定よりかなり遅れてしまいましたが、17時頃、三伏峠三伏峠小屋に到着しました。小屋に着いてすぐにテント幕営申請し、テントを張りました。

 天気が悪いためか、テント場のテントは少なめ。どこかの中学か高校のワンゲル部の賑やかなテントが印象的で、昔のことを思い出させました。

 三伏峠小屋には小屋利用者にのみ水道を引いていて、テント泊の人は旧三伏小屋の跡への途中にある水場まで汲みにいかなければならないのがつらかったです。

 荷物がほぼないとは言え、小屋から往復25分、、、。何回も往復したくないので、一度で数リットル汲んで戻ってきました。

 今日は早く休むべく、すぐに夕食を作って早めに寝袋に入りました。

9日目はエネルギー切れで三伏峠まで

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オレンジ色の点が9日目のテント泊地、緑色の線がこれまで進んだ道のり。

 9日目は、両俣小屋から塩見岳を越えて三伏峠まで進みました。

 食料などの備蓄と台風が来そうな影響で10日目と11日目で何とか太平洋まで行きたいところです (12日目は食料が尽きてしまうので)。

 天気予報だと10日目は午前中までは天気がよいということを信じ、三伏峠から赤石岳聖岳を越え、聖小屋より南に行くことを目標にしました

 9日目は予定と比べるとあまり進めなかったのですが、10日目でどこまで進めるでしょうか?

(2017年 日本アルプス縦走・10、11日目に続く)