ソマリアの多様な𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂属の種類 その1
新型コロナウイルスの感染拡大による非常事態が続いた2020年も残すところわずかになってしまいました。
ブログの更新をサボり気味でしたが、今年最後に何か記事を書こうと考え、このタイトルで書くことにしました。ただ、書ききれそうにないので、続編も考慮してその1としました。
記事の内容自体は以前から頭の中にあったネタで、多様な𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂属 (ドルステニア属)に関する内容で、とりわけアフリカのソマリア産の個体に関するものです。
ソマリア近辺で多様な𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 ドルステニア
ドルステニアと言えば、𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂 Schweinf. ドルステニア・フォエティダが日本では一番出回っている種類です。寒さに気を付ければ栽培しやすく、自家受粉で1株でも種子を容易につけるため、ネットでよく売られているのを見かけます。
逆に、𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂以外の種類は中々見かけません。他の種類も栽培は別段難しくないのですが、色々な理由から流通が少ないようです。
𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂は分布が広く、アラビア半島のサウジアラビア、イエメン、オマーン等の中東諸国から、アフリカのスーダンからソマリアにかけて産します。
分布が広い𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂にはいくつかのタイプがあり、研究者によっては1種類にまとめる意見、変種や種で分ける意見があります。
国内でよく出回っている𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂は産地が不明な系統が大多数ですが、形態の特徴からアラビア半島産かアフリカ北部産が多いのではないかと、個人的に推測しています。
典型的な𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂はアラビア半島かアフリカ北部に分布するとされているからです。
ソマリア産の𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂 、及びその近縁種をいくつか集めて栽培していますが、アラビア半島産の典型的な個体とは見た目が少し異なり、また何種類かのタイプがあります。
また、ソマリアでは、𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒈𝒚𝒑𝒔𝒐𝒑𝒉𝒊𝒍𝒂 Lavranosドルステニア・ジプソフィラや𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒍𝒂𝒗𝒓𝒂𝒏𝒊 McCoy & Massara (2008) ドルステニア・ラブラニといった固有種も記録されていることから、ソマリアのドルステニアは多様であると言えそうです。
ソマリア産の𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂の近縁種
ソマリア産の𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂の近縁種で、未記載種として流通する系統をいくつか持っているので、一部紹介します。
まずは、L&H 10341 (LAV 10341としても出回っています)という系統です。John Lavranos氏とFrank Horwood氏がソマリアのMait Escarpmentで採取したものです。
今はない業者であるExoticaの商品番号11184の系統と同じと思われます (元はここから流通した可能性も?)。ES 11184、Nr. 11184とある系統も同じ系統です。
余談ですが、ESやNr.はフィールドナンバーではなく、業者の商品番号です。ESはExoticaの園主Ernst Specks氏の略、Nr.はドイツ語で番号を意味するNummer (英語のNumber)の略です。
この系統、L&H 10341は、人によっては𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂だとする人もいます。
茎は滑らかで全体的に薄緑色が強い系統です。茎が滑らかというのは、茎にある白い突起 (植物学的には、托葉 stipuleに相当する部位のようです)がごく短いということです。
日本でよく出回っているタイプの𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂と比べると、全体的に薄緑色で、陽に焼けたり寒さに当たっても茎や葉が赤黒い色や紫色を帯びにくいことが違いだと感じます。
葉もツヤのない薄緑色で、葉柄が少し短い傾向にあります。
また、この系統の最大の特徴は、茎に迷彩のような模様が入ることです。
よく見ると、白~薄緑色の斑点のような模様が茎の表面にあります。これは、昆虫の食害や傷みなどではなく、健康な個体にも元からあります。
花は他のタイプと比較できていないので、今後比較したいです。
自家受粉でよく種を付けますが、たまにしか流通を見ない系統です。
ソマリア産の未記載種とされるドルステニア
次は、LAV 23877という系統で、ソマリアで採取されたもの。
これはExoticaで商品番号16139で販売されていた系統と同じもので、Exoticaでの販売時はsp. nov. (species novaの略、新種という意味)が名前の後につけられていました。
現時点ではまだ記載論文が見当たりませんので、未記載種と呼んでいます。
LAV 23877系統を栽培していて特徴的だと思う部分は、
(1)葉の縁に浅い鈍鋸歯が発達すること
(2)茎の白い突起 (托葉)が他の種類と比べて長くなること
(3)花 (学問的にはCoenanthiumという花序に当たる器官)の付属物 (学問的にはappendageと呼ぶ。ヒトデの腕みたいな部分のこと)が少し長いこと
です。
とりわけ、(1)の特徴は後述する𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒉𝒐𝒓𝒘𝒐𝒐𝒅𝒊𝒊 ドルステニア・ホルウッディを思わせるので、この特徴からsp. nov.と付けられて販売されていたのかなと妄想しています。
𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒉𝒐𝒓𝒘𝒐𝒐𝒅𝒊𝒊を思わせますが、𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒉𝒐𝒓𝒘𝒐𝒐𝒅𝒊𝒊ではないことは確かで、未記載種である可能性は高いと感じます。
また、𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒉𝒐𝒓𝒘𝒐𝒐𝒅𝒊𝒊と近縁であれば、𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂とは種子の形態で明確に異なるはずなので、それも確認したいです。
この種類も上の写真の通り、自家受粉でよく種を付けますが、なぜか流通がほとんどないです、、、。
ソマリアの珍種、𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒉𝒐𝒓𝒘𝒐𝒐𝒅𝒊𝒊
本日の最後の種類は、ソマリア産の小型の珍種、𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒉𝒐𝒓𝒘𝒐𝒐𝒅𝒊𝒊 Rzepecky (2016)ドルステニア・ホルウッディです。
𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂の異名同種 (シノニム)とされることもありますが、種子の形態が明確に異なるようですので、別種と思います (フォエティダは種子表面がtuberculate、ホルウッディはpapillateとのことです。説明すると長くなるので割愛します)。
また、葉の縁に深い鋸歯が発達するのが大きな特徴です。たまに、鋸歯がほぼない偽物が販売されていますので気を付けましょう。
また、種の記載文には「𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒉𝒐𝒓𝒘𝒐𝒐𝒅𝒊𝒊の根は塊根状に太る」とあり、この部分も大きな差異ですので確認したいです。
𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂の根は、少し太くなることはあっても繊維状で、塊根状には太りません。
𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒉𝒐𝒓𝒘𝒐𝒐𝒅𝒊𝒊の栽培が難しいと言われるのも、塊根等の性質によるものでしょうか。
また、花はよくつけても種子は中々つけない (一応、自家受粉します)ので、𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒇𝒐𝒆𝒕𝒊𝒅𝒂とは明確に異なると感じます。
以上、その1の記事になります。
ネタがもう少したまったらその2を書きたいと思います。
あ、ドルステニアの栽培ですが、冬は基本10℃以上で断水栽培なら枯れないと感じます。昼間に日に当てて鉢を温めてあげると直よしです。
気温が高い成長期は、日に当ててよく水をあげましょう。乾燥地の植物だからと言って水をほとんどあげない方がいますが、成長しませんし、花も咲かずに落ちてしまいます。夏は直射日光下で栽培していますが、午前のみ直射日光に当てたり、風通しを図ることも大事と思います。
また、これはドルステニアのどの種類でも言えますが、暑すぎると種をつけないように感じます。我が家では、8月の極端な暑さが落ち着いた9、10月頃によく種を付けます。
参考文献
McCoy, TA., & Massara, M. (2008). 𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒍𝒂𝒗𝒓𝒂𝒏𝒊. Cact. Succ. J. (Los Angels) 80(2), 78-82.
Rzepecky, A. (2016). 𝑫𝒐𝒓𝒔𝒕𝒆𝒏𝒊𝒂 𝒉𝒐𝒓𝒘𝒐𝒐𝒅𝒊𝒊 Rzepecky sp. nov. from Nudum to Novum, a Forthyish Year Hiatus. Cact. Succ. J. (Los Angels) 88(2), 66-74.