tawashiatsume

植物、主にサボテン・多肉植物。時々登山、時々お酒。

チリのサボテン、𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 エリオシケ・エスメラルダナの実生続編

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𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 BCHK 1383、種から育ててもう少しで3年たつ

 二十四節気では1年の中で一番寒いと言われる大寒の時期、この時期は植物の変化も乏しく、ブログにあげるタイムリーなネタが少ない時期でもあります。

 

 何か過去に撮り貯めたネタがないか探しましたが、なさそうなので種から育てている実生のサボテンの経過観察をブログに書くことにしました。

 

 約1年前に書いた下記の記事の続編の内容で書きます。

 

 上記の過去記事は南米チリの砂漠に生えるサボテン、𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 エリオシケ・エスメラルダナを種から育てた経過観察の記事でした。

 

 

 

 

 

 

前回の記事のおさらい

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𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 BCHK 1383、種から育ててもう少しで3年たつ

 さて、約1年たっているので前回の記事のおさらいをします (自分でも何を書いたんだっけとなりました、、、)。

 

 前回の記事をまとめると以下になります。

 

・チリのアタカマ砂漠で地面に埋まって育つ小型のサボテン

 

・黒い肌とトゲが少ないサボテンらしかぬ姿は人気がある (はず)

 

・高温多湿が苦手なためか、あまり流通していない

 

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𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 BCHK 1383、写真の個体でやっと直径2.5 cmほど

 小型のサボテンというのはそうですね。種から育てて3年弱たちますが、まだ直径が2.5~3 cmにしかなりません。

 

 あいかわらず全身が黒いサボテンで、トゲは短く、触っても予防接種の注射よりも全然痛くないです。

 

 高温多湿が苦手。これも依然としてそうです。我が家では6月~9月は全く成長しないです。

 

種から3年育ててやっと栽培のコツが見えてきた

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𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 BCHK 1383、種から育ててもう少しで3年たつ

 栽培していると、種から半年で直径が約5 mm、1年で1 cmを越えてくる感じで、他のサボテンの種類と比べると成長は緩慢です。

 

 種から半年、1年経過の姿・大きさは前回の記事を参照してください。

 

 今回は約3年栽培して直径2.5 cm越え、やっとこさ開花するサイズになりました。

 

 本種は栽培にクセがあると言われ、栽培した結果、確かにそうだと思います。種から育ててそのコツが少しつかめた気がするので、今回はそれについて書きます。

 

ニンジンのような根を持ち、高温多湿に弱い

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𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 BCHK 1383、このくらいのサイズだと地下には大きな根が発達している

 本種の自生地は南米チリのアタカマ砂漠で、アタカマ砂漠は太平洋の沿岸を寒流が流れるために高温になりにくいことが特徴です (と言っても最高気温は33℃あたりまでは上がるようです)。

 

 アタカマ砂漠は、それほど高くならない気温と、夕方から朝にかけてよく霧が出る特徴からすると、かなり特殊な環境です。

 

 砂漠ですので夜はそれなりに冷え込むようですが、冷え込んでも低地では0℃を下回ることはあまりないので、暑すぎない・寒すぎないという環境です。

 

 日本で栽培するにあたっては、夏の高温多湿の気候と、夏は夜になっても気温が高いことがネックです。

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𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 BCHK 1383、このくらいのサイズだと地下には大きな根が発達している

 地下にニンジンような根が発達する株になると、日本の夏は苦手でほとんど成長しません。たとえ水をあげてもです。むしろ、夏の水やりは腐るリスクが上がります。

 

 種から育てていると、根が太り出すのは球体の直径が5 mm~1 cmを越えてくるあたりからです。この大きさ以上の株は秋から春にかけて成長させて、夏は休眠気味に育てるべきでしょう。

 

 しかし、種から育てる場合、発芽には他のサボテンと同じく高温多湿を要求しますし、根が太く発達し始めるまでは気温が高く湿気もあった方が成長が速い気がします。

 

 つまり、種から育てる場合は、成長段階によって栽培環境を変えるべきではないかと感じます。

種から育てる際のコツ

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𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 BCHK 1383、種から育ててもう少しで3年たつ

 高温多湿が苦手な本種も、種から直径5 mm~1 cmまでの成長初期段階は、他のサボテンと同じく、高温・多湿、日光も遮光気味の環境で育てると成長が速いです。

 

 観察していると、直径5 mm~1 cmあたりから少しずつ根が太くなります。とは言え、この段階では根はまだ直径5 mm・長さ1 cmと言った小さいものです。

 

 また、直径5 mm~1 cmを越えても成長初期段階のような、水多め・湿気高めの環境で育て続けると、成長はするのですが徒長しやすくなります。

 

 加えて、初期段階の環境のままだと根が太くなりにくいようにも感じました。根が太くならず、球体だけが縦に徒長して、平たい形にもならない、、、こんな経験の方は多いのではないでしょうか?

 

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𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 BCHK 1383、自生の姿と比べると丸々と太っているが、栽培下では平たい方

 球体が大きくなると共に、それに少し遅れて根も太くなり出しますが、この段階からは根を育てる必要もあるように感じます。上の写真の個体だと、地下に太さ1 cm・長さ4 cm程のニンジンの形の根があります。

 

 これはまだ確証の無い個人の感覚ですが、本種の根を育てるのに高温・多湿の環境は向いていない気がします。サボテンのランポー玉、兜、アリオカルプス、ギムノカリキウムがよく育つような温室の閉め切った環境はあまり好みではないような気がします。

 

 直径が大きくなり出して以降で我が家で良く育つ環境は、晩秋から春の夜がよく冷える時期です。昼間は28~35℃・夜は10~15℃の環境でしょうか、大きくなってからは湿気がない環境が好みかもしれません。

 

 また、本種の自生地での姿はせんべいのごとく平たい姿ですが、これは「太い根をもって乾燥に耐えられるようになり、乾燥時に球体を収縮させることを繰り返した結果」だと感じます。

 

 ですので、栽培下でも根が発達してきたらやや乾燥気味の環境で育てないと自生地のような姿にはならないでしょう。「やや乾燥気味の環境」と一言で書きましたが、我が家ですと、屋外の風が強く午前中しか陽があたらないような環境です (雨は当たらないです)。

最後に

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𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 BCHK 1383、直径3 cm近くなりそろそろ開花かな?

 前回の記事でも書きましたが、本種は人気があるはずなのに (特に株の)流通がないのが残念だと思っています。

 

 最近は海外から種を輸入される方も増えましたし、是非フィールドナンバーの付いた由緒のあるエリオシケのサボテンを種から育てる方が増えてほしいという思いからも今回の記事を書きました。

 

 今回の写真の個体は、いずれもBCHK 1383というフィールドナンバー付きで、[Chile. Atacama: Quebrada Las Lozas o Guanillos, alt. 211 m]という産地情報が付いています。球体が紫色を帯びた黒色になりやすい系統です。

 

 この系統は海外の種子販売元で「special white and purplish colours of flowers mix.」と商品説明にあり、花が楽しみな系統です。同じ個体群が欲しいという方、ぜひ海外で探してみて輸入してみてください。