北米の多肉植物雑記、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂属のマイナーな種類
人気の多肉植物の1つに、バラの花ように葉をらせん状に密生させるマンネングサの仲間があります。
色彩が多様で非常に人気のある𝑬𝒄𝒉𝒆𝒗𝒆𝒓𝒊𝒂 属 (エケベリア属)や、育てやすくプリプリとした肉質の葉が可愛らしい種類が多い𝑺𝒆𝒅𝒖𝒎属 (セダム属)あたりが有名でしょうか。
今回紹介するのは、北米を中心に自生するマンネングサの仲間の𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂属 (ダドレア属、ダドレヤ属)です。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂で有名な種類は、非常に大きくなり、粉吹いた純白の葉が美しい𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒃𝒓𝒊𝒕𝒕𝒐𝒏𝒊𝒊でしょうか。市場でもよく株が出回っています。
今回は、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂の中でもあまり流通していない種類を中心に、雑記として紹介できたらと思います。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂は北米西海岸が故郷
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂属は、北米西海岸に分布し、特にアメリカ合衆国のカリフォルニア州の海岸沿いや海岸沿いの山地に多くの種類が分布しています。
姿がよく似た𝑬𝒄𝒉𝒆𝒗𝒆𝒓𝒊𝒂属の分布はメキシコに多く、𝑬𝒄𝒉𝒆𝒗𝒆𝒓𝒊𝒂とは分布域・生育環境が少し異なります。
北米西海岸の低地は典型的な地中海性気候で、乾燥して冷涼な夏と湿った温暖な冬が主な特徴です。
要は、カラッとしていて涼しい夏と、湿っていて寒すぎない冬で、人間にとっても過ごしやすい気候です。
夏に高温多湿になる日本とは気候が異なるので、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂は育てにくいのかなと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂の自生環境は、渓谷の日陰の岩壁から、海が見える海岸の崖、直射日光が当たる平地など、様々です。
また、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂は、気温が高い夏はあまり成長せず、主に秋から春の涼しい気候の元で成長します。夏は葉をほとんど枯らして休眠することもあります。
個人的な栽培の経験からすると、夏は遮光気味・水やりは控えて、秋から春に日光と風によく当てて水をたっぷり上げればよく育ちます。
腐りやすい𝑬𝒄𝒉𝒆𝒗𝒆𝒓𝒊𝒂 と比べると、栽培は易しいです。寒さにはやや弱い種類があるので、その点は注意です。
下からは個別の種類を紹介していきます。
クリスマスカラーになる𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂
「𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂で好きな種類を3つ挙げてください」と言われたら、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒃𝒓𝒆𝒗𝒊𝒇𝒐𝒍𝒊𝒂、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒇𝒂𝒓𝒊𝒏𝒐𝒔𝒂、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒑𝒂𝒄𝒉𝒚𝒑𝒉𝒚𝒕𝒖𝒎を挙げます。
その内の1種類、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒇𝒂𝒓𝒊𝒏𝒐𝒔𝒂 ダドレア・ファリノサは葉の色彩の鮮やかさにおいては、ぴか一の種類です。
北米西海岸の海に近い崖が主な自生地で、よく陽に当たるとロゼットの外側の葉の先端は真っ赤に染まり、ロゼットの内側の葉は白く粉吹いた色のままで、色彩のコントラストが素晴らしいです。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒇𝒂𝒓𝒊𝒏𝒐𝒔𝒂で面白いのは、葉が白くなる個体群と緑色になる個体群が自生地でも混ざって見られることです。緑色の個体群でも、ロゼットの外側の葉の先端は赤くなります。
稀に、ロゼットの外側の葉の先端は赤く、それより少し内側の葉が緑色、ロゼット中心部の葉は白くなる個体もあり、タイトルで「クリスマスカラー」と称した所以になります。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒇𝒂𝒓𝒊𝒏𝒐𝒔𝒂の自生地の写真は下記のページで多く公開されています。
写真の個体は、いずれもカリフォルニア州ソノマ群の同じ系統の種を播いて1年程育成したものですが、白くなる個体と緑色が強い個体が出ました。
今のところ中間的な色の個体は出ていません。
これから冬に向かって寒くなるにつれ、日光によく当てれば葉先が赤く染まり、とても美しくなると期待しています。
また、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒇𝒂𝒓𝒊𝒏𝒐𝒔𝒂は花の色が黄色で、花の色と葉の色の違いも美しいので、開花も楽しみです。
銀色の細長い葉の𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒍𝒂𝒏𝒄𝒆𝒐𝒍𝒂𝒕𝒂 ダドレア・ランケオラタは、葉が他の種類に比べて細長くなる種類です。
この個体は、カリフォルニア州のサンタ・バーバラ群の標高1,158 mで採取された個体群で、海岸沿いに生える𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂よりは寒さに強いと考えられ、日本でも多くの地域で育てやすそうです。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒍𝒂𝒏𝒄𝒆𝒐𝒍𝒂𝒕𝒂も、葉がよく粉を吹いて白くなります。
このような粉を吹く種類は、用土の土の量を減らし、日光と風によく当てて育てると、コンパクトな真っ白い植物になるので、その姿を目指して栽培しています。
マンネングサの仲間は、自生地では腐植質や土がほとんどないような岩の隙間に生えることも多く、自生地での姿を真似るなら、敢えて用土の量を減らして栽培するのも一つの手です。
用土や肥料を多くすると、成長は速く大きくなるのですが、一方でだらんと伸びあがった姿になることも多いです。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂は、秋から春に水と日光、用土、肥料を多めにして育てれば容易に大きくなるのですが、直径が2、3 cmを越え始めたあたりから用土と肥料を制限して栽培することで、自生地のようなコンパクトな姿に育っていきます。
株が小さくても花が咲く種類も多いので、鉢増ししなくても十分に楽しめます。
真っ赤に染まる𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂
こちらは、現状緑色が濃い𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂になります。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒑𝒂𝒍𝒎𝒆𝒓𝒊 ダドレア・パルメリという種類で、カリフォルニア州のサン・ルイス・オビスポ群の低地由来の個体たちです。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒑𝒂𝒍𝒎𝒆𝒓𝒊でググってみると、緑色っぽい個体の写真が多いかと思いますが、種子販売元の自生地での同系統の個体の写真が真っ赤に染まりとてもキレイだったので、種子を買って育てています。
この種類も寒い時期によく陽にあてると赤く染まるんじゃないかと予想して、楽しみに育てています。
幅広の葉になる𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂
今度の種類は、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒄𝒚𝒎𝒐𝒔𝒂 ダドレア・キモサという種類です。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒍𝒂𝒏𝒄𝒆𝒐𝒍𝒂𝒕𝒂など、葉が白くなる種類とどこが違うのか?、と疑問に思われる方も多いかと思います。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒄𝒚𝒎𝒐𝒔𝒂は葉が他の種類に比べて幅広くなる傾向があり、𝑬𝒄𝒉𝒆𝒗𝒆𝒓𝒊𝒂 の葉の形に近いです。
まだあまり特徴が出ていませんが、直径3 cmを越えるあたりから、他の種類との違いがよく出てきます。
このサイズでも、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒍𝒂𝒏𝒄𝒆𝒐𝒍𝒂𝒕𝒂と比べて葉の形が少し異なり、粉がよく吹くので一応区別できます。
そうそう、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂で葉が粉を吹く種類は、葉の上から水をあげると粉が落ちてしまいます。
写真で葉が斑に白く汚れているように見えるのは、水で粉が流れた跡です。
ブルーグレイの色がキレイな𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂
これが今回の最後の種類です。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒂𝒃𝒓𝒂𝒎𝒔𝒊𝒊 ssp. 𝒎𝒖𝒓𝒊𝒏𝒂 ダドレア・アブラムシ―のムリナ亜種という種類です。
この種類は、他の種類に比べて葉が細長く尖るのと、葉が青みを帯びるのが特徴です。
自生地の個体を見ると、日光によく当たった個体は葉が薄い紫色のような独特の色になっています。
また、花はくすんだ黄色といった感じで、他の種類が黄色~オレンジ色~赤色と派手な色の花を付けるのに対して大きな違いです。
しかし、自生地の独特な葉の色や、花が咲いている時の色の渋さから、気に入る人にはぜひオススメしたい種類です。
マイナーダドレアも流行ってほしい
今回は、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂のマイナー種、それも普通の人からするとどれも同じ種類に見えるような種類の紹介になってしまいました。
そもそも𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂自体がややマイナーと言うかたもいるでしょう。
𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂も野外での姿を見てみると、色のバリエーションは𝑬𝒄𝒉𝒆𝒗𝒆𝒓𝒊𝒂 の交配種にも劣らない種類もあると思います。
日本では、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂 𝒃𝒓𝒊𝒕𝒕𝒐𝒏𝒊𝒊など、一部の限られた種類しか流通していませんが、𝑫𝒖𝒅𝒍𝒆𝒚𝒂の他の種類にも観賞価値の高い種類もあり、流通して楽しむ人が増えたらなぁという想いでいます。