南米のアタカマ砂漠に生えるサボテン 𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 ~近年記載された新種~
新年あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!
今回の記事は、日本でも人気なサボテン𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 コピアポアの中でも、近年新種発表された種類に焦点を当てたいと思います。
サボテンは昔から分類学の分野で研究されていますが、南米では未だに新種のサボテンが記載されることが珍しくありません。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂もコンスタントに新種が発表されているグループで、ここ数年だけで見ても数種類は記載されています。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂は、よく新種記載されている
2010年以降に新種記載された𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂の種類だけでも、以下の種類があります (学名変更された種類は除く)。「学名 (記載年) 記載者」で書いています。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒈𝒓𝒊𝒔𝒆𝒐𝒗𝒊𝒐𝒍𝒂𝒄𝒆𝒂 (2011) I. Schaub & Keim
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒔𝒂𝒓𝒄𝒐𝒂𝒏𝒂 (2012) I. Schaub & Keim
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒔𝒖𝒑𝒆𝒓𝒃𝒂 (2012) I. Schaub & Keim
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒒𝒊𝒎𝒃𝒂𝒏𝒂 ssp. 𝒓𝒖𝒃𝒊𝒔𝒑𝒊𝒏𝒂 (2015) Piombetti
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒍𝒐𝒈𝒊𝒔𝒕𝒂𝒎𝒊𝒏𝒆𝒂 ssp. 𝒊𝒎𝒑𝒆𝒓𝒊𝒂𝒍𝒊𝒔 (2015) Piombetti
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔 (2016) I. Schaub & Keim
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂 (2016) I. Schaub & Keim
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒉𝒖𝒎𝒊𝒍𝒊𝒔 ssp. 𝒎𝒂𝒕𝒂𝒏𝒄𝒊𝒍𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔 (2016) I. Schaub & Keim
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒂𝒍𝒈𝒂𝒓𝒓𝒐𝒃𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔 (2018) Katt.
上記から、平均して2010年以降1年に約1種程度のペースで新種記載されていることと、Schaub氏とKeim氏という方々がよく記載していることがわかります (後者については後程詳しく書きます)。
これらの新種の中には、既に市場で流通している種類もいくつかあります。
2016年に記載された種類その1 𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔
2016年には3種類が新種記載されていますが、その内2種類は比較的市場で見かけるようになりました。
2種類の内の1つ目が、𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔 コピアポア・コラレンシス (コッラレンシス)です。
黒紫色に染まるボディと黒いトゲがカッコよく、人気がありそうですが、日本では認知度が低いせいかまださほど人気ではないようです。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔は、2011年に新種記載された𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒈𝒓𝒊𝒔𝒆𝒐𝒗𝒊𝒐𝒍𝒂𝒄𝒆𝒂 コピアポア・グリセオビオラケアによく似ている種類で、ボディの色やトゲの色も似ています。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒈𝒓𝒊𝒔𝒆𝒐𝒗𝒊𝒐𝒍𝒂𝒄𝒆𝒂の方は、既に日本のサボテンマニアの間で認知されているようで、小さな株でも1万円以上の高値で取引されることが多いようです。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔と𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒈𝒓𝒊𝒔𝒆𝒐𝒗𝒊𝒐𝒍𝒂𝒄𝒆𝒂は、後述するように違いがあるのですが、栽培下では似たようなボディとトゲの色を呈するので、𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔もおススメです。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔の基準産地は、チリ中北部のFreirina (フレイリナ)という町の近くで、標高400~720m程の山の急な斜面のようです。
海岸沿いや低地に生える𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂よりは、やや涼しい環境を好むのかもしれません。
また、根がニンジンのように大きく発達することも特徴の一つで、よく出回っている黒王丸や孤竜丸のような種類とは、生態も自生地も異なることがわかります。
2016年に記載された種類その2 𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂
2種類目は𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂 コピアポア・フスカという種類です。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔と𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒈𝒓𝒊𝒔𝒆𝒐𝒗𝒊𝒐𝒍𝒂𝒄𝒆𝒂と比べると流通量は少ないですが、海外では種子を販売する業者さんが複数出てくるようになりました。
上記の2種のようにボディが黒味を帯びた紫色になることはあまりないですが、何とも言えないような色になります。また、ボディが粉吹くこともあるようです。
トゲの色は、新しいトゲは黒い色をしているものの、古くなると灰褐色になるようです。種小名の𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂 (ラテン語で「黒色、褐色」の意味)もこのことに由来するのかなと思いました。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂も、基準産地は𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔と同じくチリのFreirina近郊のようです。標高は320~700mとあり、海に近い山地に生えるようです。
また、この種類も根がニンジンの形に大きく肥大するようです。
産地や生態からして𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔と𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂は同じ育て方で上手く育つのではないかと思います。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔と𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂の自生地では、周りに柱サボテンである𝑬𝒖𝒍𝒚𝒄𝒉𝒏𝒊𝒂の種類や𝑬𝒄𝒉𝒊𝒏𝒐𝒑𝒊𝒔 𝒅𝒆𝒔𝒆𝒓𝒕𝒊𝒄𝒐𝒍𝒂、他にも𝑶𝒙𝒂𝒍𝒊𝒔 𝒈𝒊𝒈𝒂𝒏𝒕𝒆𝒂や𝑶𝒙𝒂𝒍𝒊𝒔の1種が自生しているようで、これも栽培の参考になりそうです。
いずれにしても、夏の暑すぎる気温や、風がない高温多湿の環境は嫌いそうです。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔と𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂の、近縁種との違いは?
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔と𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂は、ボディやトゲの色から𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒈𝒓𝒊𝒔𝒆𝒐𝒗𝒊𝒐𝒍𝒂𝒄𝒆𝒂に近縁種とされますが、大きな違いは𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔と𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂が大きなニンジン状の塊根を持つことでしょう。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒈𝒓𝒊𝒔𝒆𝒐𝒗𝒊𝒐𝒍𝒂𝒄𝒆𝒂は、記載文では根はニンジン状には太ることはなさそうなことが書いていました (根は少し太くなる程度)。我が家でも栽培していますが、撮影に適した株が今ないので写真ナシです。
あとは、𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔と𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂も中刺が𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒈𝒓𝒊𝒔𝒆𝒐𝒗𝒊𝒐𝒍𝒂𝒄𝒆𝒂より長く、上に突き上げるように生えることが大きな違いです。
また、トゲの色も𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒈𝒓𝒊𝒔𝒆𝒐𝒗𝒊𝒐𝒍𝒂𝒄𝒆𝒂は全体的に黒い色であるのに対して、𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂のトゲは灰褐色です。𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔は、比較的新しいトゲは黒色~濃茶色のようですが、古いトゲは退色して金色になるようです。
もっとも、トゲの色の違いは自生地での比較なので、栽培下でのトゲ色にはあまり参考にならないでしょう。
他にも細かい違いはあるんですが、気になる方は記載論文を最後に挙げたので読んでみるとよいです。
𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂の新種をよく発表しているSchaub氏とKeim氏とは?
Schaub氏とKeim氏は、2010年以前から𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂の新種をコンスタントに記載しています。
この二人を調べてみると、「第三の人生」でチリに移住し、首都のサンティアゴから100kmほど離れたAlvaraitoという場所で、Cactusalvaraltoという名前のナーセリーでサボテンと多肉植物を栽培して販売しているそう。
日本へ輸入できるかはわからなそう。
また、残念なことにKeim氏の方はどうも2017年になくなったようです。どうりで2017年以降に𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂の新種が記載されていない訳です。
Keim氏の逝去は非常に残念ですが、まだ𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒊𝒈𝒏𝒂𝒛𝒊𝒊 𝒏. 𝒏.等、新種候補の未記載種があるようなので、解明されるとよいなぁと思いつつ、今回の記事を締めたいと思います。
参考文献
I. Schaub & Keim (2010, publ. 2011). 𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒈𝒓𝒊𝒔𝒆𝒐𝒗𝒊𝒐𝒍𝒂𝒄𝒆𝒂 Una nuova specie di 𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂. Cactus & Co., 14(4): 10 (5-15, figs.).
I. Schaub & Keim (2016). 𝑪𝒐𝒑𝒊𝒂𝒑𝒐𝒂 𝒇𝒖𝒔𝒄𝒂 and 𝑪. 𝒄𝒐𝒓𝒓𝒂𝒍𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔 Description of two new species. The Cactus Explorer, 16: 48.
Carolina Frêne (2017). El Dr. Ricardo Keim y su época. Cuadernos Médico Sociales, 57 N° 1: 75-80.