北米の可憐なスベリヒユの仲間、レウィシア・レディビバ
重い腰をあげて、久々のブログ更新です。今回は、気に入っている多肉植物の種類を種から育てて、開花、さらにはさらに種子を採ることができたので、その記念で書きます。
紹介する植物は𝑳𝒆𝒘𝒊𝒔𝒊𝒂 𝒓𝒆𝒅𝒊𝒗𝒊𝒗𝒂 レウィシア・レディビバという種類で、北米大陸の主にシエラネバダ山脈周辺に自生する、ごくごく小型の多肉植物です。
日本で畑の脇などに雑草として生えるスベリヒユの仲間であり、スベリヒユに似てレウィシア・レディビバも棒状~ヘラ状になる多肉質な葉を持ちます。
しかし、地面から多肉質な数cmの葉を出す姿は変わっており、何より植物体よりも大きな花をたくさん着けてくれる美しい植物です。
レウィシア・レディビバの花は直径5、6 cmほどにも達する大きな花で、植物体に比べて非常に大きいです。
花が咲かない時期の姿は地味で、自生地ではその存在にさえ気付かないくらいだと思います。
開花期には大きな花で目立ち、あたかも地面から花だけが直接生えているように見えるのが面白いところです。
写真の個体は、アメリカ合衆国のカリフォルニア州のマリポサ郡 (Mariposa)という場所で採取された種子が由来です。
種子買ったのが確か2018年頃で、種子をまいて育てて2020年5月に初開花しました。
この系統の花は、花の中心は白く、花びらの外側に向かって薄いピンク色のグラデーションがかかり、優しい雰囲気も持ち合わせてとても可愛らしいです。
レウィシア・レディビバは花色のバリエーションが多く、他の産地では花びら全体が濃いピンク色に染まる個体や白花の個体まで様々あるようです。
レウィシア・レディビバは自家受粉せず、交配には複数のクローンの個体が必要です。
私のところでは3年程、毎年異なるクローン間で交配して採種を試みて失敗していました。
原因ははっきりしないのですが、個人的な感想としては、開花してしている間の受粉可能な時間帯が狭いのではないかと思っています (花もそもそも2、3日でしぼむ)。
今年は色々な方法を試し、少ないながらも交配して結実・採種まで行きついたのでとてもうれしいです。
日本ではレウィシアの園芸種は出回っていますが、レウィシア・レディビバを見ることは滅多になく、山野草の分野で生産する業者が稀にいる程度です。
このような美しい植物は栽培者の心の琴線を大いにひくものと思いますが、予想よりも流通が少ないようです。
流通が少ない理由は、先に述べた採種がしがたいことと併せて、育てている内に実感できました。
レウィシア・レディビバは種子の発芽にも条件が必要で、栽培にも少し気をつかいます。
北米大陸の乾燥地に多く自生し、その自生地は夏は暑くなるものの、雨が少ないためにカラッとした気候だと聞きます。また、夏でも夜は10℃ほどまで下がるようです。
生育期が秋から春であり、暑い夏は休眠するのでまだ日本で栽培可能ですが、日本の高温多湿の夏での休眠中の管理が肝となります。
関東地方の低地にある私の栽培場では、秋になって涼しくなった10月頃からよく水をあげ、5月頃までは最低気温が-5℃より下がらない限りは頻繁に水やりをしています。
5月に入ると葉がしおれて赤くなり始め、これが休眠に入るサインです。ただ、葉が枯れながら花が咲く年もありました。
休眠に入ってからは、私の栽培場では日陰で風通しが良い場所に置き、水をほぼあげないで夏越しをさせています (他所では水をあげている方もいると思います)。
夏の休眠に入り、秋にそのまま目覚めてこないという方が多いと推測しますので、夏の休眠の管理は重要です。
写真の個体は有名なヨセミテ渓谷の近くの低地由来であり、その自生地では夏はほとんど雨が降らないのではないかと思います。
一方でヨセミテ渓谷の低地では夏の気温自体はそれなりに高くなるはずですので、温度よりも湿気を低く管理することの方が重要かもしれないと思い、上記のような管理になりました。ただ、閉め切った温室内のような極端な高温はよくないかもしれません。
レウィシア・レディビバを種子から開花、交配、採種と、ライフサイクルの一通りを栽培してみて感じたことは、種子からの成長は速く、小型であるために開花まで育てることはさほど難しくないということです。
難しいのは、株が大きくなってきてから、長年にわたって維持することだと思います。
株の維持には、夏の気候がカラッとしていて涼しい北海道や長野等で育てるのでもない限り、コツが必要です。
また、標高が高い産地の個体は夏越しがより一層難しくなります。
姿・花とも美しい植物で栽培する価値はありますが、上記のような理由から流通が中々ない、もしくは維持が難しい植物です。
しかしながら、山野草店等で見かけることがあったら是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。