Seeds To Seeds: 種子からサボテンを育てて開花、結実まで
以前からブログに載せていたこのサボテン、𝑬𝒓𝒊𝒐𝒔𝒚𝒄𝒆 𝒆𝒔𝒎𝒆𝒓𝒂𝒍𝒅𝒂𝒏𝒂 エリオシケ・エスメラルダナ。
種子からサボテンを育てて開花させ、交配して結実させて種子を自分の家で採ることができました。
実生の記録として何本かブログに記事を載せてきましたが、今回が最終回です。
以前に載せた記事はこちらです。
私の記憶が間違っていなければ、今回で4本目の記事です。
1年に1本のペースで書いていて、最初の記事は2020年、前回の初開花の記事はちょうど去年のこの時期でした。
今年も開花し、今年は同系統内の個体で交配を行って結実させ、100~200粒の種子を採りました。
種子から育てて開花・結実させ、種子を得ることができたので、ブログのタイトルを「Seeds To Seeds (種子から種子へ)」としました。
ちなみに、エリオシケ属の種類は大多数が他家受精するという性質を持つので、同じクローンの株で受粉しても結実しません。
種子を採りたい場合は、異なるクローン、すなわち異なる種子由来の個体を開花させて、花粉を違う個体の雌しべの柱頭につけてあげないと結実しません。
種子から育てて次世代の種子を得るまで至って思うのは、本種は蒸し暑さがやや苦手で成長が遅い小型種である故に、開花までの栽培に適度なスキルや観察力が必要なことと、結実させるのはさらにスキルがいるということです (同系統内での結実は、より一層ハードルが高い)。
綿密に観察していないのですが、本種の花は初夏に開花して、花が開いて2、3日もするとしぼんでしまいます。
1年の中で初夏の2、3日間しか咲かず、異なるクローンの個体を開花させて、さらに開花期間も合わせるには、綿密な観察とテクニックが必要です。
私の栽培場では、複数個体のツボミが大きくなり始めてからは定期的に観察し、水やりを調節して開花時期を合わせました。
交配していて思ったのは、人が手をかけて育てても交配させるのはこんなにも大変なので、自生地ではどうやって自生代の個体を生み出しているのだろうかということです。
何か開花時期を合わせる秘密があるのかもしれないとも思います。
本種は花に糸状に細く柔らかいトゲが密生し、果実にもそれらの糸状のトゲが残るため、結実して以降も奇妙な姿を楽しむことができます。
結実しない場合は花が萎んで数日で球体から花が脱落しますが、結実すると果実が少しずつ大きくなります。
我が家で観察した限りでは、本種の果実は若い頃は緑色で、熟すと黒紫色になります。
果皮や果実の構造は、質感がやや硬く、果実を割ると中は空洞になっていました。
多くのサボテンの種類は、果実の中に隙間なくぎっしりと種子と果肉が詰まっていますが、エリオシケはなぜか果実内に空洞がある種類が多いです。
エリオシケの果実の果肉の少なさは、動物によって食べられることを想定していない仕組みに思えますが、そうだとすると、アリが種子の散布を助けているのでしょうか。
花を咲かせることは、栽培における目的・醍醐味の一つではありますが、それのみならず、ライフサイクル全体を観察していると、その種類の生活環や特性等、様々なことへのヒントが得られて面白いものです。
また、一つの種類について連続した事象の観察ができることは、自生地探索では得られにくく、栽培することによって実現できることとも思います。
最後に、この記事を読んでいただいた人で、種子からサボテンを育ててその一生と、自生代へのライフサイクルを観察してみたいという方が増えるとよいです。
本種はやや栽培が難しい種類ですが、私の栽培場のように設備がなくとも、観察と工夫次第で時間をかければ可能になることもあります (私の栽培場は温室等加温設備無し・屋外で雨よけのみ)。
設備がない場所で異なる気候の植物を育てるには、スキルや観察力、考察力、テクニックが必要ですが、それらは一方で自分自身に思いもしないような発見をもたらしてくれることも多いです。
温室等の設備で育てるよりも時間はかかるけど、その分、自分だけの濃密な経験と発見が得られるはずと信じています。