珍しい多肉植物、プシロカウロンを種から育てて種を採るまで
夏に入ってから多肉植物達の成長も鈍く、ネタに乏しかったため、ブログの更新をサボっていました。
何かネタがないかなと考えたところ、この多肉植物の開花と種子の自家採取で記事にしようと思い立ち、書くことにしました (思い立ってからも連日の暑さでやる気が出ず、中々更新できないでいました、、、)。
茎の形態が特徴的な、プシロカウロン属の多肉植物
今回紹介するのは、𝑷𝒔𝒊𝒍𝒐𝒄𝒂𝒖𝒍𝒐𝒏 𝒅𝒊𝒏𝒕𝒆𝒓𝒊 プシロカウロン・ディンテリという南アフリカに産する多肉植物の1種です。
メセンと呼ばれる、ハマミズナ科の多肉植物の1種でもあります。
さて、この種類、自生地での姿が奇妙で大変面白いのにも関わらず流通が皆無に近い状況です。南アフリカ共和国の多肉植物を扱う業者で、稀に種子が販売されている程度です。
百聞は一見に如かず。まずは下記のページの貴重な自生地の写真を見てください。
プシロカウロンの茎には明瞭な「節」があり、葉が落ちた茎は小さな竹のようにも見えます。
「節」のある茎が肥大すると、節足動物の昆虫の体節のようにも見えるため、大変奇妙で面白い見た目を呈します。
こんな、如何にも人気がありそうな植物がなぜ流通していないのだろうと思いながら、偶然種子を入手する機会にも恵まれ、試行錯誤しながらも何とか種子から育てて開花させ、自家採取までできたので、そのことを記事でまとめたいと思います。
かなり水を好む多肉植物
そもそも、𝑷𝒔𝒊𝒍𝒐𝒄𝒂𝒖𝒍𝒐𝒏属の種類の情報が少なすぎるのですが、分布域から推測して秋まきで育てることにしました。
結論から言ってしまいますと、10月頃に種を播き、翌年の6月下旬から夏の間、断続的に開花しました。成長が順調ならば、種子から育てて8ヶ月ほどで開花するようです。
途中の栽培課程であまり写真を撮らなかったので、成長過程を詳細に説明することはできないのですが、我が家で栽培した結果、以下のようなことがわかりました。
・水を大変好みます。涼しい時期や小苗の時期は常時腰水、真夏の酷暑の時期でも我が家では1~2日に1回はたっぷり水をあげていました。
・暑い時期には葉が落ちることもありますが、明確な休眠時期はないと思われます。秋から春にかけてよく成長するメセンですが、夏に断水すると枯れることが多いです (水を控えめにしすぎるのもよくないようでした)。
・開花は、毎年梅雨の中頃~終わり頃から始まり、調子がよいとその後、数ヶ月にわたって夏の間咲くこともありました。
また、枯れる場合暑さが原因であることもあるのかわかりませんが、暑さ対策として、非常に乾きやすい陶器鉢で栽培しています。暑い日は1日でカリカリに乾く半面、鉢内は蒸れにくく、過度な高温にもなりにくいです。
栽培場所は通年風通しのよい野外で、冬は鉢がカチカチに凍らなければ問題ないようです。我が家では夏でも遮光せず、午前中は直射日光があたる環境です。
同じ種類を温室で栽培されている方から聞きましたが、開花せずあまり調子がよくないようです。野外で風によく当てて栽培するのも重要な条件の1つかもしれません。
栽培環境は人によりけりですが、栽培される方がいましたら参考になりましたら幸いです。
根が再生しにくい?
また、栽培していてもう1つ感じたことは、根が再生しにくいのではないかということです。
種を播くと発芽して発根し、成長とともに勢いよく根が伸びていきます。この時の根の成長はメセンの中でも旺盛で、成長が速い植物であることが察せられます。
一番初めに伸びる根は肥大して細いゴボウ根となりますが、そのゴボウ根から周囲に伸びるヒゲ根は細く弱々しいです。
何株か枯らした経験からすると、この細いヒゲ根を乾かし過ぎたりすると、ヒゲ根が死んでしまって再生せず、そのまま水を吸えなくなって枯れるパターンが多いように感じました。
季節を変えて10回以上は茎を挿して挿し木による増殖を試みましたが、一度たりとも成功していないことから、根が再生しずらいのではないかと推測しています。
メセンの種類では挿し木更新が容易な種類が多く、すぐに根が再生するのですが、この種類は正反対であり、これが流通の障害になっている理由の1つかと思います。
開花と結実
開花ですが、前述した通り、梅雨の中頃から夏にかけての蒸し暑い時期に花が咲くようです。開花の時期に水を切りすぎると花が咲かないことがありました。
ネットで調べるとディンテリ種は赤花のようで、これは別種かな?とも思いますが、判別がついてないので、入手源の名前のままで紹介します。
花はメセンでは小型の部類で、直径が1 cmほどです。群生すればそれなりに見事かもしれません。
花が小さいからか種の入っているカプセルも小さかったです (自家受粉しないので、種採りには、別クローン間での交配が必要です)。
1カプセルあたり入っている種子数も10~30粒程度と少なかったです。
種が入ったカプセルですが、水をかけるとすぐにカプセルが開いて種を放出します。この生態は他のメセン類と共通なようです。
上記の開いたカプセルは種子を採取した後なので何も入っていませんが、種子はこんな感じです。
種子は幅は1 mmほど、普通の植物の種子からすると非常に小さいですが、メセンとしてはやや大きい部類に入る種子ですね。
また秋になったら播いて、第2世代目を育てようかなと楽しみにしています。
自生地のような姿の茎になるのか?
開花・採取まで成功しましたが、まだまだ自生地の姿には程遠く、自生地のイモ虫のような姿の茎を栽培下で実現するのが次の目標です。
通年育てた経験からすると、季節によって生じる茎の様子が異なります。
冬も成長するのですが、日光がやや弱いからなのか、生じる茎は細く、節と節の間も間延びしがちです。
春と秋の涼しい時期には日光もそれなりに強く、太く節間が短い茎が生じやすいように感じました。
また、茎が生じた後でも肥大して茎が太くなります。
ここら辺に自生地の姿を再現するヒントが転がっているかなと思います。
ぶわーっと栽培での経験・感想を述べるだけの記事になってしまいましたが、面白い種類ですので、他の方の栽培の参考になり、流通のきっかけになってくれればと思います。