tawashiatsume

植物、主にサボテン・多肉植物。時々登山、時々お酒。

白いボタンのようなサボテン

いボタンのようなサボテン

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𝑬𝒑𝒊𝒕𝒉𝒆𝒍𝒂𝒏𝒕𝒉𝒂 𝒎𝒊𝒄𝒓𝒐𝒎𝒆𝒓𝒊𝒔 SB 63 [USA. NM: Otero Co., Sacramento Mts]

 今日は、アメリカ合衆国南部からメキシコ合衆国にかけて自生する「ボタンカクタス」と呼ばれるサボテンを紹介します。白いトゲで覆われた球体は、コートなどに付いているあのボタンのような見た目で、パッと見ではサボテンなのか、そもそも生きている植物なのかわかりません。

 このボタンカクタス、2種~数種を含む𝑬𝒑𝒊𝒕𝒉𝒆𝒍𝒂𝒏𝒕𝒉𝒂属 (エピテランサ属、またはエピテランタ属)のサボテンの通称名で、いずれの種類も写真のように白いトゲを密生させてボタンのような見た目をしています。

種同士が似ていて変化に乏しいサボテン

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𝑬𝒑𝒊𝒕𝒉𝒆𝒍𝒂𝒏𝒕𝒉𝒂 𝒃𝒐𝒌𝒆𝒊、頂点からつぼみが出ている

 ボタンカクタスの代表的な2種、𝑬𝒑𝒊𝒕𝒉𝒆𝒍𝒂𝒏𝒕𝒉𝒂 𝒎𝒊𝒄𝒓𝒐𝒎𝒆𝒓𝒊𝒔 エピテランサ・ミクロメリス (園芸名:月世界、天世界など)と𝑬𝒑𝒊𝒕𝒉𝒆𝒍𝒂𝒏𝒕𝒉𝒂 𝒃𝒐𝒌𝒆𝒊 エピテランサ・ボケイ (園芸名:小人の帽子)を紹介します。2種ともよく似ていて、違いがよくわからないサボテンです (違いはあるので詳しくは「種の特徴」で後述します)。

 また、成長が遅いこともあり、花が咲かないと生きているのかよくわかりません。我が家では冬に断水すると球体が縮み、春に水をあげると球体が水を吸って膨らむので「ああ、生きてる」と判断しています(笑)

白いトゲに覆われモワモワ

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𝑬𝒑𝒊𝒕𝒉𝒆𝒍𝒂𝒏𝒕𝒉𝒂 𝒎𝒊𝒄𝒓𝒐𝒎𝒆𝒓𝒊𝒔 SB 63、拡大してみる

 上の写真は、𝑬𝒑𝒊𝒕𝒉𝒆𝒍𝒂𝒏𝒕𝒉𝒂 𝒎𝒊𝒄𝒓𝒐𝒎𝒆𝒓𝒊𝒔 エピテランサ・ミクロメリスの拡大写真です。サボテンのトゲが生えてくる部分を「刺座 (しざ)」と呼びますが、この刺座1つ1つから何十本もの白いトゲが生えているのがわかります。そしてトゲの奥に、緑色の球体が透けて見えます。

 ミクロメリス種はトゲが球体にあまり圧着して生えないため、頂点などがややささくれたように見えます。対してボケイ種では、トゲが球体に圧着してトゲの本数も多いため、トゲにより作られる表面の構造はよりスムーズに見えます。

 エピテランサ属には、ミクロメリス種とボケイ種の中間的な特徴を持つ個体群が発見されていたり、ミクロメリス種を数種類に分類する研究者もいますが、そこら辺の話はまた後日に、、、。

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𝑬𝒑𝒊𝒕𝒉𝒆𝒍𝒂𝒏𝒕𝒉𝒂 𝒃𝒐𝒌𝒆𝒊、よりトゲが多く密に生える

 ミクロメリス種もボケイ種も、トゲは細く柔らかいため触っても痛くありません。トゲに覆われた球体を触ると、モコモコしたようなモワモワしたような不思議な感触がします。あえて物で例えると、目が細かくやや硬いハンカチでしょうか。

 ボタンカクタスは栽培は難しくなくサボテン専門店で販売されているので、この面白い感触のサボテンを是非栽培されてはいかがでしょうか?

 但し、ミクロメリス種もボケイ種もよく似ているため、札に月世界 (ミクロメリス種)とあるのにボケイ種だったり、札に小人の帽子 (ボケイ種)とあるのにミクロメリス種だったりすることがたまにありますので気を付けましょう。

栽培について

 エピテランサ属の種類は、大まかに言うと高温多湿な夏は少し苦手でやや寒さに強いです。最低気温も-5℃くらいまでなら平気なので、我が家では通年野外栽培です。成長期の春と秋は通風のよい直射日光下で週1回ほど水を与えています。夏も我が家は春秋と同じ環境に置いて断水していますが、場合によっては日陰に移した方がよいかもしれません。冬は雨があたらない日向で完全に断水しています。

 ボタンカクタスの魅力は密生した白いトゲなので、通年できるだけ日が強く風通しがよい環境で育て、この姿を維持したいところです。日陰に置くと球体が間延びして緑色に見えたり、風通しが悪いと腐ってしまうこともあります。

種の特徴

 𝑬𝒑𝒊𝒕𝒉𝒆𝒍𝒂𝒏𝒕𝒉𝒂 𝒎𝒊𝒄𝒓𝒐𝒎𝒆𝒓𝒊𝒔 エピテランサ・ミクロメリスと𝑬𝒑𝒊𝒕𝒉𝒆𝒍𝒂𝒏𝒕𝒉𝒂 𝒃𝒐𝒌𝒆𝒊 エピテランサ・ボケイはよく似ていますが、以下の点で識別ができます。

・トゲ:ミクロメリス種は1つの刺座から生じるトゲは20~40本、ボケイ種は1つの刺座から生じるトゲは50~90本。また、ボケイ種の方がトゲがより球体に圧着し、異なる刺座のトゲ同士が重なって数層のトゲの層を作る。

・花:ミクロメリス種の花は直径が1 cm程と小さいが、ボケイ種の花は直径が1.7 cm程とやや大きい。また、花の咲く時期はミクロメリス種は早春 (2月から4月)であるが、ボケイ種は春から初夏 (4月から6月)とズレる。

・雄しべ:ミクロメリス種のおしべの本数は数本であるが、ボケイ種のおしべの本数は20~40本である。

・受粉様式:ミクロメリス種は自家受粉 (1個体で受粉し結実する)するが、ボケイ種は他家受粉 (1個体では受粉しても結実しない)である。但し、ミクロメリス種に含まれているいくつかの亜種や変種は他家受粉であり、狭義のミクロメリス種のみが自家受粉する。