tawashiatsume

植物、主にサボテン・多肉植物。時々登山、時々お酒。

ミニ盆栽として楽しめる多肉植物、チレコドン・レウコスリクス

 いよいよ本格的に寒くなってきて、冬がやってまいりました。日本の温帯圏に住んでいると、冬は多くの樹木が葉を落として草も枯れて休眠に入る時期であり、冬は植物栽培があまり楽しめない時期という印象があります。

 今回紹介する多肉植物は秋から春にかけての涼しい時期に成長し、場所によっては冬でも成長などが観察されるような植物です。𝑻𝒚𝒍𝒆𝒄𝒐𝒅𝒐𝒏 𝒍𝒆𝒖𝒄𝒐𝒕𝒉𝒓𝒊𝒙 チレコドン・レウコスリクスという種類で、南アフリカ共和国西部の冬季降雨地域に自生しています。夏は乾期にあたるため、葉を落として休眠します。

場所をとらないコンパクトな多肉植物

f:id:tawashiatsume:20191219134657j:plain

𝑻𝒚𝒍𝒆𝒄𝒐𝒅𝒐𝒏 𝒍𝒆𝒖𝒄𝒐𝒕𝒉𝒓𝒊𝒙 (Blouhuis)、直径も高さも数 cm

 写真のチレコドン・レウコスリクス、種を播いてまだ2、3年の個体ですが、すでに開花しています。つまり、この直径も高さも数 cmの大きさで親株ということになります。こじんまりとしたまま楽しむことができ、種から比較的短い期間で花まで見れることもあって非常に魅力的です。

 写真の個体はBlouhuisという場所で採取された由来を持ちます。この個体群は茎が伸びにくく、特にコンパクトな姿を楽しめるようです。近年、市場でもチレコドン・レウコスリクスを見かけますが、茎が伸びて樹木のようになった個体もあり、「異なる個体群の形質差なのか?」「それとも違う種類なのか?」などと思いながら眺めています。

名前の由来にもなっている、毛が生えてモワモワした葉

f:id:tawashiatsume:20191219134704j:plain

𝑻𝒚𝒍𝒆𝒄𝒐𝒅𝒐𝒏 𝒍𝒆𝒖𝒄𝒐𝒕𝒉𝒓𝒊𝒙 (Blouhuis)、葉には短い毛が生える

 葉を拡大して見てみると、葉の表面全体に1、2 mmほどの毛が生えているのがわかります。実はこの特徴を元に、この種類の学名の種小名𝒍𝒆𝒖𝒄𝒐𝒕𝒉𝒓𝒊𝒙が名付けられています。この種小名は、「白」を意味する古代ギリシャ語の λευκός (leukós)と「毛」を意味するギリシャ語の τριχός (trikhós)が組み合わせられてできています。つまり、種小名は「白い毛」という意味になります。わかりやすく、納得のいく種小名ですね。

 この葉自体の感触もフニフニしているため、触ると毛も相まってフワフワした感触がして面白いです。夏は葉を落としてしまいますから秋から春にかけて楽しめるフワフワ葉っぱです。

伸びにくく、肥大しやすい幹

f:id:tawashiatsume:20191219134653j:plain

𝑻𝒚𝒍𝒆𝒄𝒐𝒅𝒐𝒏 𝒍𝒆𝒖𝒄𝒐𝒕𝒉𝒓𝒊𝒙 (Blouhuis)、幹は太く木質化している

 𝑻𝒚𝒍𝒆𝒄𝒐𝒅𝒐𝒏属の種類はいずれも幹が木質化しやすいため、小さいながらも古木のような見た目になりやすいです。𝒍𝒆𝒖𝒄𝒐𝒕𝒉𝒓𝒊𝒙種は特に高さに対して幹が肥大しやすく (Blouhuis産の特徴だと言う方もいらっしゃいました。私は他の産地の物をあまり見ていないのでよくわかりません。)、小さいうちから木質化した太い幹、樹皮のひび割れや剥がれが観察できます。

 一般的な盆栽の樹形とは異なりますが、小さいまま特徴的な幹も楽しめるのでミニ盆栽としての観賞価値も非常に高い種類だと感じています。種は市場でほとんど見かけませんが、是非種からの実生をオススメします。 

栽培について

 秋から春にかけて生育する種類で、成長期の間は日当たりと風通しのよい環境で育てています。凍らない気温であれば通年野外です。成長期の水やりは、子株の内はやや多めの方が調子がよいように感じました (水切れすると成長が鈍った印象があります)。開花株になってからは週に1回ほどの水やりの頻度です。夏は風通しのよい日陰で断水しています。

種の特徴

 葉は厚く全面が毛に覆われます。成株では葉がやや平らになり、葉の表側の正中線に大きな溝ができて窪みます。花茎にも毛が生え数花をつけます。花は筒状で、黄緑色から黄白色を帯びます。花弁の切れ込んだ部分はピンク色を帯びた白色です。