刺が非常に長くなるサボテン、エキノプシス (ロビビア)・フェロックス
種から育てたサボテンの中でも個人的にかなり好きなサボテンを紹介します。
𝑬𝒄𝒉𝒊𝒏𝒐𝒑𝒔𝒊𝒔 𝒇𝒆𝒓𝒐𝒙 エキノプシス・フェロックス (𝑳𝒐𝒃𝒊𝒗𝒊𝒂 𝒇𝒆𝒓𝒐𝒙 ロビビア・フェロックスという学名を使う人もいます)というサボテンで、長さ20 cmか、おそらくそれ以上にもなるトゲをつける種類です。
Google検索で「Echinopsis ferox habitat」などと打って画像検索すると、凄まじいトゲを持つ自生地の姿を見ることができます。栽培下でもかなり凶暴な姿に育ちますが、自生地の株はそれ以上で畏怖感すら覚えます。
男子は皆こういうトゲだらけのサボテンが好きだと思いますが、僕も例外ではなく自生地の写真を見て虜になりました。
いつか育てたいと思い、種を買って育ててみたのでその記録です (株はあまり売っていません)。
種を播いて半年の姿
始めに、𝑬𝒄𝒉𝒊𝒏𝒐𝒑𝒔𝒊𝒔 𝒇𝒆𝒓𝒐𝒙のWR 209というフィールドナンバーがついた種子を20粒ほど買いました。
WR 209というナンバーによると、ボリビアのオルロ県オルロの標高4,100 mで採取された系統とのこと。エキノプシス (ロビビア)の仲間は南米の高山地帯に生えますが、この種は一層標高が高いところに生えているようです。
そんな高山の植物が海抜20 mもない温帯の場所で育つのか不安もありましたが、自生地のように育てたい!というワクワクした気持ちから種を買ってすぐに播きました。
2017年の11月頃播いたらしく、上の写真は播いて4、5ヶ月ほどの個体たちです。
順調に発芽したものの、小さいトゲを数本生やしていますが冬だったこともあって球体は小さく (直径2、3 mm)、色は紫色から灰色、、、。この時点ではうまく育たないなぁという感想でした。
桜が咲く頃からは野外の通風がよい直射日光下で育てました。水は表土が乾いたらたっぷりあげる感じ。
上の写真は、4、5ヶ月の写真からわずか2ヶ月ほどたった同じ鉢の写真です。
「ちょっとサボテンっぽくなってきた」と思いませんか?
球体は直径5~10 mmほど、トゲも触るとチクッとするような硬く鋭いトゲを出しています。
先に栽培のコツを言ってしまうと、通風と直射日光が重要な気がします。基本的に丈夫なサボテンで暑い時期に腐ったりすることはないのですが、するどいトゲを出させるには夜間の低温が必要で、丈低い姿を維持するには通風が重要です。
さらに育てて、播種から8ヶ月ほどたつとお互いの個体たちがぶつかるようになったので、1鉢→2鉢へと植え替えを行いました。
直径が1 cmを越えるあたりから徐々に水やりの頻度を減らしていきました。成長期でも多くて1週間1回程度。休眠期は完全に断水するようにしました。
種を播いて一年程経過
播種から1年ほど経過、植え替えた2鉢のうちの片方が上の写真です。
1円玉と同じくらいの直径にまで成長しました。
このあたりから大きな変化がありました。
それまでは鋭いけど細くて白いトゲしか生えませんでしたが、1年経過する時期がちょうど秋で気温が低くなり、立派な太くて長くて黒いトゲが生えだしました。
鉢を水平方向から観察してみると、この長くて黒いトゲが生えているのがわかります。
球体の頂点に、球体の直径と同じくらい長いトゲが生えています。
このような長いトゲは春か秋の夜間の気温が下がる時期でないと発達しないようです。概ね、夜の気温が5~15℃の時にこのようなトゲをよく出します。
このくらいまで育つと一気にカッコよさが増します。自分で種から育てて姿が変容していく様を見れるので感慨深いです。
冬の姿
サボテンは成長していく様子を観察するのも面白いですが、成長はしないものの冬でも姿に変化があるサボテンもあり、その変化も一見の価値があります。
寒い地域に生えるサボテンには、冬の乾燥した時期に球体をギュッと縮める種類があります。
雨が降らないため乾燥により球体から水分がなくなって縮みますが、種類によってはかなりしぼんで地面に潜ってしまう種類もあるようです。
𝑬𝒄𝒉𝒊𝒏𝒐𝒑𝒔𝒊𝒔 𝒇𝒆𝒓𝒐𝒙は地面には潜らないものの、球体が垂直方向に縮みトゲが密になります。また、球体の色も濃い緑色から紫色や茶色を帯びてきます。
我が家では通年野外で育てており、冬は断水して直射日光下で寒風にさらしています。そうすると、このように冬季の独特の縮む生態を観察することができます。
生きているかよくわからない色と姿、、、一見不健康に見えますが、春になって水をあげると球体は膨らんで色も緑色になるので問題ないようです。
この冬の姿こそ、トゲだらけで𝑬𝒄𝒉𝒊𝒏𝒐𝒑𝒔𝒊𝒔 𝒇𝒆𝒓𝒐𝒙本来の姿ではないのかとさえ思っています。まるでハリネズミやタワシのような姿です。
冬は断水しておけば、-5℃くらいまでは耐えるように思います。昼間はちゃんと日に当てていれば、夜はもっと気温が下がっても枯れない気もします。
𝑬𝒄𝒉𝒊𝒏𝒐𝒑𝒔𝒊𝒔 𝒇𝒆𝒓𝒐𝒙を育てて、冬に寒さと乾燥にあてて休眠期独特の生態を観察するのはいかがでしょうか?
鋭いトゲが生えるようになると成長も速くなった
種を播いて1年と半年が経過した頃に2回目の植え替えを実施しました。
2鉢→5、6鉢に増えました。段々、育てる場所が、、、(笑)
1鉢に4株ずつ植えて育てましたが、上記の写真のように植え替えから3ヶ月ほどでパツンパツンに球体が大きくなり、すぐ球体同士がぶつかるほどになってしまいました。
これくらいの大きさになると鋭いトゲを四方八方に伸ばすため、素手で植え替えするのが難儀になってきました。
また、鋭く長いトゲは先端がフック状になっているため、布や皮膚によくひっかかること、、、植え替え時は箸などが必須です。
植え替えをしつつ順調に大きくなり、特に球体がよく成長したのが見てとれますが、大きさの割にトゲが貧弱です。
理由は2回目の植え替え以後、ややし湿っぽく風通しが悪い環境で育てていたからと、夏で夜の気温が下がらずトゲが発達しなかったからです。
やや徒長している個体があることからも、乾燥した通気の良い場所がよいようです。日本の夏は湿気がありすぎて、暑すぎるのでしょう。
この後、3回目の植え替えを行い、1鉢に1株ずつ植え替えました。
5、6鉢→15鉢以上。ああ、場所が、、、。
種から約2年経過、良さが出てきた
3回目の植え替え前はトゲが貧弱だった個体たち、植え替えて秋になり気温が下がると、球体の直径と同じかそれ以上に長いトゲをつけてくれました。
長さは4、5 cmほど、黒いシックな色合いのフック状のトゲを頂点に何本も生やしています。
どうも気温と日照、風が適切な条件なら、球体の直径と同じくらいの長さのトゲをつけるようです (大きくなってもずっとそうかはわからないけど)。
これが正しいと20 cmの長さのトゲをつけるにはおよそ球体が20 cmほど必要なのかな?
育てられるかどうか、育っても置く場所があるのかどうか、そういう野暮なことは忘れて、とにかくどこまでトゲを長くできるのか育ててみたいですね。
いつかはこの種類の故郷であるボリビアやアルゼンチンの高山帯の砂漠にも行きたい、、、
種から育ててみて、この種類がどのような環境に自生しているか少しわかった気がします。
自生地をググって調べ、こういう風に育てたら上手くいくかな?、と参考にしてみたり、また一方で栽培を通して自生地の環境を想像してみる。
野生植物の園芸の醍醐味の1つだと強く実感します。
自生地への憧憬も抱きつつ、都会の低地で南米高山のサボテンをどこまでかっこよく育てられるか、これからも試行錯誤していきたいです。
栽培について
我が家では通年野外栽培です。直射日光があたり通風の良い場所、なるべく雨があたらない場所で育てています。小さい頃は表土が乾いたらたっぷり水をやりますが、直径1 cmを越えるあたりから1週間に1回程度に控え、大きくなるにつれてもっと間隔をあけています。冬は完全に断水しています。
我が家では断水すれば-5℃程度まで耐えることを確認しています。
種の特徴
(後程記述)