2017年 日本アルプス縦走・3日目~のっぺりした薬師岳と雪残る庭園の黒部五郎岳~
3日目の8月11日、午前3時半起床。
昨日夕方から夜通し降っていた雨はほぼ止んできていて、出発するころには止みそうでした。
2日目が割とハードな行程でしたが、筋肉痛はなし、疲労感もあまりなし。
今日も快適にハイスピードで歩いて山登りを楽しめそうな感覚でした。ただ、一つ天気がよくなさそうなことを除けば。
スゴ乗越小屋へ、大きな登り降りを越えて
午前4時半頃、五色ヶ原キャンプ場を出発しました。
この時、五色ヶ原の木道の付け替えをしていて、木道がない場所を通る時はぬかるんでいて滑りそうになりました。早朝の暗い時は尚更。
五色ヶ原山荘からスゴ乗越小屋までは、エスケープルートがない道をひたすら山を越えて行くだけです。
この五色ヶ原山荘からスゴ乗越小屋の区間は意外にも登り降りが多く、距離の割には時間がかかり疲れます。
特に見どころがあるわけでもないので、五色ヶ原から薬師岳まで縦走する人はあまりいません。静かなルートです。
湿原地帯の木道が続き、緩やかな低木林の登山道になっていきました。
早朝は濃霧、歩いていると徐々に天気は良くなりそうでしたが、上空には厚い雲がありスカッとした晴れにはならなそう。8月中旬なのにまるで不安定な梅雨空のようでした。
そんな感じの天気の中、登り降りも激しかったせいか、厚い雲に包まれたり晴れたりと、雲の中を行ったり来たりしているような不思議な感覚でした。
五色ヶ原から越中沢岳という小高い山に午前6時頃到着。
ここからスゴ乗越まで降り、少し登り返したところにスゴ乗越小屋があります。
スゴ乗越までは、ハイマツや低木が茂る急な坂道を登っては降り、さらにまた同じくらい登るといった区間があり、中々疲れるところです。
早朝で体力に余裕がある時に、また天気がそれほど悪くない時にこの区間ササっと通過できたのはよかったです。
スゴ乗越のあたりの登山道は砂利が混ざった急な坂で、濡れていると滑りそうなところもありました。
しかし基本的に展望はよく、脇に雪渓や高山植物を見ながら、ヒイヒイ言いながらも頑張って歩きました。
スゴ乗越は標高2,169 mとやや低いので、低木と笹が生えるような環境でした。
スゴ乗越自体は標識があるだけで特に展望などはありませんでしたが、少し登ると針葉樹林に覆われたスゴ乗越小屋が見えてきました。
午前7時半頃、小屋に到着。スゴ乗越小屋はひっそりとした針葉樹林の中にありました。
茶色いペンキで塗られた赤い屋根の小屋は、中に本棚と机のスペースがあり、夜はここでランプをともして時間を過ごせるのかなと勝手に想像を膨らませました。いつか小屋に泊まりたいですね。
スゴ乗越小屋は水も引いてきているので、ここの水道で水を補給して標高2,926 mの薬師岳を目指して出発しました。
百名山の薬師岳へ
スゴ乗越小屋から薬師岳まで、ほぼ単調な登りです。
標高差は700 mほどありますが、アップダウンがないという点は助かります。
草原や低木が混ざる道を登っていくと、徐々にハイマツが生え岩もゴロゴロした道に変わります。
低木が混ざる草原の道は眺めも程よく、つらい登りのそばで高山植物のキレイな花が気持ちを癒してくれました。
登っていくと稜線を上を歩くようになり、背がより低いハイマツが優先種である環境へと変わっていきます。
同時に稜線に出ると薬師岳への進行方向左側には黒部ダムの上流の黒部川の流れが見え、右側にはに遠くに日本海側の平野の街が見えました。
段々標高を上げていくと、薬師岳手前の北薬師岳に着きます。
北薬師岳は大きな岩がゴロゴロしていて、岩に道しるべとなるペンキのマーキングがあるのですが、岩の風景はどこも同じで迷いそうになります。
濃霧の時や夜間の通過の時は注意が必要ですね。
北薬師岳を過ぎると、見晴らしのよい稜線歩きになります (この日は濃霧でしたが、、、)。
左側の谷には昔に氷河で削られたカールという地形が見え面白いです。
北薬師岳から薬師岳まで30分ほど稜線散歩を楽しむと薬師岳に着きました。
薬師岳はゆったりとした傾斜の広い山
標高は2,926 m、岩がゴロゴロする広い山頂には社があり、天気がよければ360度の眺めが楽しめたと思います (以前天気の良い時に来ました)。
お昼ご飯にしようかなと思いましたが、濃霧で景色も見えず気温も低いので、太郎平小屋まで降って、小屋で食事をとることにしました。
太郎平小屋でお昼ご飯!
薬師岳から太郎平小屋へはなだらかな砂利混じりの登山道を降りていきます。
薬師岳は岩がゴロゴロしている場所もありますが、全体としてはなだらかな山で女性的な雰囲気のある山です。
富山県の折立という場所から太郎平小屋を経由して薬師岳に登るコースは、行程はやや長いものの緩やかな傾斜の道を登っていくので、3,000 m級の日本百名山に登りたいという人にはお勧めです。
太郎平小屋手前の薬師峠という峠に降りるところは沢沿いのやや急な道ですが、薬師峠まで下りれば太郎平小屋はすぐそこ。
途中の薬師峠のキャンプ場は山の日に登山を楽しんでいる人々で大変賑わっていました。
12時手前のお昼時に太郎平小屋に到着しました。
太郎平小屋は折立から登ってきた人で混んでいて、皆お昼ご飯を食べていました。
太郎平小屋は、ラーメンやカレーなどの軽食で有名な小屋で、自分は確かカレーを食べたと記憶しています。
次に目指す山は、日本百名山の黒部五郎岳
太郎平小屋は薬師岳に登る起点にもなりますし、また雲ノ平という「日本最後の秘境」と呼ばれる黒部川源流部の奥地に行く起点でもあります。
雲ノ平にはよくヨーロッパの庭園にも例えられる景色があります。なだらかな地形に池や湿地が点在し、温泉も湧いている、、、四方を奥深い3,000 mの山に囲まれた素晴らしい場所です。
太郎平小屋から出る残りのコースは、これから進む黒部五郎岳への縦走路です。このコースが一番人が少ないでしょう。
太郎平小屋から黒部五郎岳方面に少し登ると太郎山という山があります。
太郎山の付近から振り返って薬師岳を眺めると、のっぺりとした広い山容で頂上部が赤茶色に染まっているので目立ちます。
少し離れた場所から見ても、薬師岳とわかるような山の姿はさすが日本百名山。
黒部五郎岳への縦走路は、人の少ないハイマツなどがしげる稜線をひたすら進む道でした。
午後は雲が多くなり、黒部五郎岳に進むにつれて濃霧になってしまったので、黙々と耐えて進みました。
黒部五郎岳に近づくと、やがてどっしりと構える黒部五郎岳が見えてきます (この日は濃霧だったのでうっすらと見えました)。
最後、黒部五郎岳に登る坂がつらかったことを覚えています。
濃霧であとどれくらい登るかわからない急坂をひたすら登る、、、白い岩が混じる道は霧もあって四方が同じ景色に見えました。
やがて登っていくと登山道脇に標識が落ちていて、黒部五郎岳の肩に到着したことを理解しました。
あたりは依然として濃い霧に包まれ、ここから10分も登らない山頂も同様で展望がないことが予想されたので、山頂を踏まずに黒部五郎小舎に下ることにしました。
午後になりエネルギーが枯渇してきた身体にピュウピュウと冷たい風が吹きつけてきて、飴やクッキーを食べてすぐに出発しました。
ちなみに、黒部五郎岳の山頂は以前登りましたが、晴れていれば眼下には庭園のようなカールが、遠くには3,000 m峰がよく見える素晴らしい景色があります。
庭園のような黒部五郎岳のカールを抜けて黒部五郎小舎へ
黒部五郎岳の肩からは、カールの岩混じりの側壁を下ってカールに降り、カール内を通って行きます。
黒部五郎岳の山頂の北壁は岩壁ですが、その岩壁の下からカールになっています。
カールの底は平らな地形で、遥か昔に氷河で運ばれた大きな岩が横たわり、岩の間を残雪の雪解け水が流れ湿地を潤しています。。
晴れていれば、カールの底の庭園のような場所と後ろに屹立する岩の黒部五郎岳山頂の眺めが圧巻です。さすが日本百名山と思わされる絶景です。
カールを通り過ぎて湿った樹林帯の道を1時間も進むと、黒部川源流部の奥地に位置する小屋である黒部五郎小舎が見えてきました。
黒部五郎小舎、到着!
16時45分頃、黒部五郎小舎に到着しました。
黒部五郎小舎は草原のような見通しの良い場所に建てられています。
人里からかなり離れた奥地にあるため、四方は山しか見えないという北アルプスの秘境の一つです。
3日目は黒部五郎小舎でテント泊
到着がやや遅くなってしまったので、3日目は黒部五郎小舎にテントを張ることにしました。次の双六小屋まで行くと確実に日が暮れてしまうだけでなく、エネルギーも切れてきて事故につながりかねなかったからです。
レースではないですし、準備をしていれば自分でペースや旅の予定を調整できるのが単独の登山の利点ですね。
黒部五郎小舎のテント場は思いのほか混んでいました。
黒部五郎小舎は、どのルートからきてもどこかで1泊しないとたどり着けない場所にあり、そんな奥地にテント場がいっぱいになるほど登山者が来ているのにおどろきました。
8月11日が山の日であったからだと個人的には思っています。
さて、4日目は槍ヶ岳へ上り詰め、そのまま3,000 m級の岩の稜線を歩いて憧れの穂高岳まで縦走する予定です。
「いよいよ明日は北アルプスの核心部に行ける!!」
そんなワクワクする気持ちを胸に、疲れからか19時くらいにスッと眠りにつきました。
(2017年 日本アルプス縦走・4日目に続く)