2017年 日本アルプス縦走・2日目~日本百名山の劔岳と立山~
2日目の8月10日、0時より前に起きて朝ごはんを食べてテントを畳み、午前1時前には登山を開始しました。
2日目の予定は、馬場島から日本百名山である劔岳へ登り、同じく百名山の立山を通過して五色ヶ原山荘かスゴ乗越小屋まで行く計画でいました。
まずは本日の核心、標高750 mの馬場島から標高3,000 mの劔岳への早月尾根の登りです。早月尾根のコースは標高差2,200 mで、北アルプスでも指折りのハードコースです。
急登の早月尾根コース
出だし、早月尾根の標高が低い場所は樹林帯です。深夜1~3時に、鬱蒼として静まり返る森の道を、ヘッドライトを頼りに黙々と登りました。
途中、樹々が途切れたところから、遠くで街のネオンサインが揺れ動く富山平野が見えました。
荷物は重いけどもまだ体力に余裕のある2日目の軽い足取りで登っていくと、尾根の中間地点ほどにある早月小屋に到着しました。
早月小屋に着くと樹林帯から解放され、眺めのよい草原のような場所に出ます。
早月小屋の前は日本海や他の山が眺められる展望の良い場所があります。この日はまだ深夜の内に小屋を通過したため、シーンと寝静まる小屋の前から月夜を眺め、少々の休憩後にすぐ出発しました。
「空の上は雲が少なく、この日も少なくとも午前中は天気がよさそう。」
早月小屋を過ぎると、木の背丈が低くなり徐々に岩混じりの草原のような道を登るようになります。標高が上がるにつれて、高山帯へと環境が移ってきました。
早月小屋から上の道は、山頂に近づくにつれ岩と残雪だけになっていき、岩と雪の殿堂と呼ばれる劔岳らしい景色になります。
登っている途中で夜が明け、鋸のような形の尾根や荒々しい岩肌の劔岳が姿をあらわしてきました。
岩の多い登山道を登っていくと、鎖場も出てくるようになり、横に立山連峰も見えるようになると山頂は近いです。
時折、大きな岩の基部の幅が狭いような箇所を通過したり、崩れそうな岩の登りもありましたが、気を付けていれば問題ありません。
立山方面からの登山道が合わさると、山頂はすぐそこでした。
劔岳山頂到着!!
午前6時前、標高2,999 mの劔岳山頂に到着しました。立山方面から登ってきた登山者ですでに山頂が混み始めていました。
山頂には真ん中に祠があり、脇の山頂標識を持ってみんな記念撮影をしていました。
山頂は360度の展望で、登ってきた日本海の方、白馬岳から続く後立山連峰 (通称、ごたて)、そしてこれから縦走する立山方面の山々と、全てよく見えました。
記念写真を撮ってもらい、少しの休憩をして立山方面の剱山荘へと向かいました。
劔岳の垂直な岩場を下って剱山荘と剱沢へ
劔岳には、カニのタテバイ、カニのヨコバイと呼ばれるような岩場があります。
文字通り、カニのように岩にはいつくばって登り降りする箇所です。
ほぼ垂直な岩場を鎖や岩に打たれたボルトなどを頼りにして降りました。ロープを提携して同行者に確保してもらっている人もいました。落ちたらまず助からないような場所も多いからです。
ヒヤヒヤする岩場を越えていくと道は徐々になだらかになっていき、劔岳山頂から見えていた劔沢の雪渓や剱山荘が近づいてきました。
劔沢の雪渓は毎年秋くらいまで残雪があり、真夏でも雪渓を歩くことがあります。
劔澤山荘の手前はよく雪渓が残っていて、真夏でも雪渓を横断する箇所ですが、傾斜がゆるくトレースがしっかりつけられているため、アイゼンなど特別な道具は必要ありません。僕のようにトレイルランシューズでも問題なく通過できます。
ただ、劔岳の上級者ルートのように、秋まで雪が残っていて傾斜が強い場所を横断するルートは、一般的には夏でもアイゼンとピッケルが必須でしょう。
剱澤山荘に到着!水を補給して一休み
剱山荘は休むことなく通過してしまいましたが、劔澤山荘では休憩し、水の補給をしてお菓子を食べました。この先、数時間は水場がないので貴重な水をタダで汲めるホットスポットでもあります。
また、剱沢のキャンプ場は眺めがとてもよく、特にここから見る劔岳の姿は個人的には北アルプスでもベストファイブに入ります!
剱沢を通る時は必ずここで休憩して眺めます。
真夏でも雪が残り、屹立とした劔岳の岩山と残雪、それに天気もよければ青空が広がり、最高の景色だと思います。
劔岳には怖いから登りたくないという方も、剱沢からこの絶景はオススメです。
百名山の立山へ
剱沢に到着したのがおよそ午前8時。0時頃には朝ごはんを食べていたのでお昼ご飯にしてもよかったものの、もう少し先まで行くことにしました。
剱沢から、今度は立山連峰に登り返し、百名山の雄山を目指しました。
劔岳を下ってきて、それと同じくらい登り返すのは精神的につらいです。
道脇の残雪をチラチラ眺めながら、時折つらくなったら立ち止まって振り返り劔岳を眺める、、、そんな感じの登りを繰り返して立山別山に到着。
立山別山に登って立山連峰の稜線に出ると、今度は室堂の方面の眺めがよく見えました。
室堂は、雷鳥平など平らな場所が多く、小さい残雪が多い特徴的な風景なのでわかりやすいです。また、温泉も湧いていてその煙が立っていました。硫黄の臭いも漂ってきたと記憶しています。
室堂へは富山県側からも長野県側からもバスで行くことができ、本格的な登山ができなくとも夏はお散歩気分でアルプスの風景を間近に見れます。
さて、立山連峰の稜線を進み雄山へと目指していましたが、お昼に差し掛かる頃から雲が出てきて標高の高い山頂部は雲の中に入ってしまいました。
天気がよいのは早朝から午前中の早い時間のみというのは夏の高山では普通のことです。
内蔵助雪渓というほぼ万年雪の大きな雪渓を左側に見ながら登っていくと、雲に覆われた大汝山と雄山が見えてきました。
剱沢を出ておよそ1時間半ほど経過し、立山連峰最高峰の標高3,015 mの大汝山に到着しました。
山頂は雲に包まれ展望は皆無、真夏にもかかわらず冷たい風がピューピュー吹いて体感温度はおよそ10℃以下。
風を防げる場所がないか探していると、大汝山の山頂に大汝休憩所という名の食事ができる山小屋がありました。体内のエネルギーが切れてきていることもあって、ここで昼飯を食べました。
温かいショウガうどんを食べて休んで座っていると、急激に強い眠気に襲われて10分ほど眠り、気合いを入れ直してザックを背負って寒い雲の中を進んで雄山を目指しました。
大汝山から雄山はすぐで、雄山の標高は3,003 mと大汝山より若干低い程度です。
山頂標識と休憩所しかなかった大汝山に比べて、雄山には社や売店などがあり、登ってきた登山者で賑わっていました。
夏の林間学校で登ってきたジャージ姿の小学生や中学生も大勢いました。
登山道も混雑していたので、雄山はササーっと通過し五色ヶ原方面へ。
立山の喧騒を離れ、五色ヶ原山荘へ
雄山から少し下ったところにある一ノ越という峠までは人が多かったものの、一ノ越から五色ヶ原方面の登山道へ進むと歩いている人がパタンといなくなりました。
多くの人は、バスで来れる室堂から登り始め、室堂→一ノ越→雄山のコースを往復するようです。五色ヶ原へは何時間もかかり、山小屋やテントで宿泊しないと行けません。
立山連峰から五色ヶ原の道は、とりたてて有名な山があるわけでなはなく、人が少ないコースでした。
途中には何か所か大きな雪渓を横切る場所があり、写真のような雪渓を横断しつつ礫混じりの登山道を歩いていくとザラ峠という場所に行きつき、そこから少し登ったところに五色ヶ原がありました。
五色ヶ原に到着!
五色ヶ原は湿原や草原からなる気持ちの良い場所でした。
高山植物が多く、花が咲く時期は名前の通り五色に彩られる場所ではないでしょうか。
この日はあいにく昼からの濃霧が晴れることなく展望がありませんでしたが、それでも草原を通る木道の道はつい立ち止まりたくなるような良い場所でした。
霧の中の五色ヶ原を歩いているとポツンと山小屋の姿が見え始め、そこが五色ヶ原山荘でした。時刻は大体午後2時ころ。
ここでテント泊をするか、それとも日の入りギリギリまで頑張って次の山小屋であるスゴ乗越小屋まで行くか迷いました、、、。
しかし、雨が降りそうだったこと (予報も確か午後から雨だった)、まだ2日目なので無理をする利点がないことから、2日目は五色ヶ原のキャンプ場でテントを張って午後を山の湿原でのんびり過ごすことにしました。
2日目は五色ヶ原でキャンプ
五色ヶ原のキャンプ場は、山小屋からキャンプ場が少し離れていること、水は要煮沸とのことが少し不便でしたが、高山植物がそこかしこに生える湿原地帯にテントを張れるので素晴らしい環境です。
テントを張った後は少し散歩したり、早めの夕食を作りながら湿原の風景を楽しみました。
天気予報通り、午後4、5時からパラパラと雨が降り始めたので、テント内に避難してゴロゴロしながら、ああしようかな、こうしたら楽しいかななどと翌日以降の予定について頭の中で想いを巡らせていました。
そうしているうちに自然に眠くなり、3日目の起床時刻を決めて床に就きました。
日本アルプス縦走・2日目は、馬場島から登り、劔岳と立山連峰を越えて五色ヶ原まで来ました。行動時間はおよそ14時間、距離だと20~30 kmは歩いたと思います。
最初の劔岳への登りがきつかったので2日目は距離があまり稼げませんでしたが、3日目以降は北アルプスの3,000 m峰を縦走するので多少は楽になるかな?
3日目の予定は、五色ヶ原→スゴ乗越小屋→薬師岳 (百名山)→太郎平小屋→黒部五郎岳 (百名山)→黒部五郎小舎、を最低限のノルマとしました。
黒部五郎小舎でテント泊になる想定で、余裕がありそうなら、黒部五郎から三俣蓮華岳を越えて双六岳、双六小屋へ進むことも考えていました。
(2017年 日本アルプス縦走・3日目へ続く)