tawashiatsume

植物、主にサボテン・多肉植物。時々登山、時々お酒。

南米アンデス山脈に咲く小型の花サボテン、レブチア その3

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 ssp. 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 '𝒑𝒔𝒆𝒖𝒅𝒐𝒎𝒊𝒏𝒖𝒔𝒄𝒖𝒍𝒂' WR 11 [Argentina. Salta: Cachipampa to Cachi]

 小さなサボテン、レブチア属の種類の紹介も今回で3回目です (前回は↓)。

 前回がピンク系統に偏ったので、今回はオレンジ系統多めでいきます。

カクテルのようなミックスされた色の花

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 '𝒎𝒖𝒅𝒂𝒏𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔' WR 689 [Argentina. Salta: Santa Ana, alt. 3,900 m]

 1種類目は、現在は𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 レブチア・ピグマエアに統合されている、𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒎𝒖𝒅𝒂𝒏𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔 レブチア・ムダネンシスという種類。

 花はオレンジ色が強いけれど、外側の花弁は薄いピンク色で内側にいくにしたがってオレンジ色が濃くなるグラデーションが入ります。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 '𝒎𝒖𝒅𝒂𝒏𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔' WR 689 [Argentina. Salta: Santa Ana, alt. 3,900 m]

 ピンクとオレンジの混ざり具合が、何となくカクテルのカシスオレンジやテキーラサンライズを連想させて、甘い気分 (?)になりました。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 '𝒎𝒖𝒅𝒂𝒏𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔' WR 689 [Argentina. Salta: Santa Ana, alt. 3,900 m]

 花を先に見てしまったけど、球体も見てみると白いトゲが生えています。レブチア・ピグマエアにしてはトゲが強い方で、触るとやや痛い。

 この系統は、WR 689 [Argentina. Salta: Santa Ana, alt. 3,900 m]というナンバーが付いていて、𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒎𝒖𝒅𝒂𝒏𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔として新種記載された時の基準標本の系統だそう。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 '𝒎𝒖𝒅𝒂𝒏𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔' WR 689 [Argentina. Salta: Santa Ana, alt. 3,900 m]

 また、このWR 689という系統はやや大きくなりやすく、ゆえに成長が速い気がします。レブチアを育てるのがあまり上手くないけども、種子から2年で開花しました。

 産地情報を見ると、アンデス山脈の標高3,900 mの地点で採取された系統なのに、我が家では育ちやすいという不思議。育てて見ないとわからないものです。

イボイボが目立つ球体と濃いオレンジ色の花

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒎𝒂𝒏𝒅𝒊𝒏𝒈𝒂𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔 HJ 421 [Bolivia. Chuquisaca: W of Tarvita, alt. 2,800 m]

 2種類目はマイナーな種類。花色は濃縮オレンジジュースとトマトジュースを足して2で割ったような濃いオレンジ色。

 そんな飲み物は飲んだことないけど、何となく濃いジュースを思い起こさせる色合い。

 また、球体はイボが目立ち、ちょっと独特な姿です (奥の白い毛玉みたいな種類は別種)。球体の見た目はサボテンのフライレア属に似ています。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒎𝒂𝒏𝒅𝒊𝒏𝒈𝒂𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔 HJ 421 [Bolivia. Chuquisaca: W of Tarvita, alt. 2,800 m]

 タイトルにマイナーな種類と書きましたが、これは𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒎𝒂𝒏𝒅𝒊𝒏𝒈𝒂𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔 レブチア・マンディンガエンシスという種類です。2008年に記載されたばっかりの種類だそうで、知らない人も多そう。

 HJ 421 [Bolivia. Chuquisaca: W of Tarvita, alt. 2,800 m]というナンバーがついているけど、自生地の写真もほぼ見たことがない謎の種類。謎だけど、珍しい種類という話。

薄いオレンジ色の花

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 MN 158 [Argentina. Jujuy: Caspalá - Humahuaca, alt. 3,700 m]

 またまた、オレンジ色の花。しかし、この系統の色は薄いオレンジで、優しい色合いです。

 他の物で例えると、薄皮で包まれたミカンの房のような印象を受けました。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 MN 158 [Argentina. Jujuy: Caspalá - Humahuaca, alt. 3,700 m]

 写真の種類は、𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 レブチア・ピグマエアという種類で、MN 158 [Argentina. Jujuy: Caspalá - Humahuaca, alt. 3,700 m]というフィールドナンバーがついています。

 富士山の山頂くらいの標高の場所に生えていた系統ということで、これもまた驚きます。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 MN 158 [Argentina. Jujuy: Caspalá - Humahuaca, alt. 3,700 m]

 1種類目の𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒎𝒖𝒅𝒂𝒏𝒆𝒏𝒔𝒊𝒔 WR 689とどこが違うの?、と聞かれると少々困りますが、微妙な違いにこだわるのがオタクの気質です。

 現在では同じ種類として扱われていますが、違いとしては、WR 689は花びらの先端がやや尖りオレンジ色が濃いのに対して、MN 158は花びらの先端がやや丸く薄いオレンジ色です。

 花を分解して細かく構造を観察すればもう少し差異があるかもしれません。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 MN 158 [Argentina. Jujuy: Caspalá - Humahuaca, alt. 3,700 m]

 また、MN 158の方が球体がやや小さめで、トゲが長く密なようです。

 レブチアの仲間は、種内変異が大きいとされる割に自然交雑種がほとんど記録されていないこともあり、見た目による分類が難しいですね。

深紅の小さい花

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 ssp. 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 '𝒑𝒔𝒆𝒖𝒅𝒐𝒎𝒊𝒏𝒖𝒔𝒄𝒖𝒍𝒂' WR 11 [Argentina. Salta: Cachipampa to Cachi]

 さて、次は真っ赤な深紅の花𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 ssp𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 '𝒑𝒔𝒆𝒖𝒅𝒐𝒎𝒊𝒏𝒖𝒔𝒄𝒖𝒍𝒂' レブチア・デミヌタです。WR 11 [Argentina. Salta: Cachipampa to Cachi]というフィールドナンバーがついています。

 𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒔𝒆𝒖𝒅𝒐𝒎𝒊𝒏𝒖𝒔𝒄𝒖𝒍𝒂という名前で売られていましたが、現在では、瑠璃鳥という日本での名前がついている𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 ssp𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂と同種とされます。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 ssp. 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 '𝒑𝒔𝒆𝒖𝒅𝒐𝒎𝒊𝒏𝒖𝒔𝒄𝒖𝒍𝒂' WR 11 [Argentina. Salta: Cachipampa to Cachi]

 レブチアとしてはやや小さめの花ですが、濃い深紅色の花で大抵球体の周りに沢山つけるので見事です。

 昨年の栽培環境が悪ったために球体が徒長して円柱状になってしまっています。また種を播き直して小さくてかわいい球体の姿を楽しみたいです。

ごく小さいオレンジ色の花の種類

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 '𝒉𝒂𝒂𝒈𝒆𝒊 ssp. 𝒆𝒍𝒆𝒈𝒂𝒏𝒕𝒖𝒍𝒂' RH 1313 [Argentina. Jujuy: El Aguilar, alt. 3,750 m]

 またこれまでのオレンジ色の花とよく似ている系統です。

 𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 '𝒉𝒂𝒂𝒈𝒆𝒊 ssp. 𝒆𝒍𝒆𝒈𝒂𝒏𝒕𝒖𝒍𝒂' レブチア・ピグマエアのRH 1313 [Argentina. Jujuy: El Aguilar, alt. 3,750 m]というフィールドナンバーがついている系統です。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 '𝒉𝒂𝒂𝒈𝒆𝒊 ssp. 𝒆𝒍𝒆𝒈𝒂𝒏𝒕𝒖𝒍𝒂' RH 1313 [Argentina. Jujuy: El Aguilar, alt. 3,750 m]

 ただ、この系統は他のレブチア・ピグマエアと同じとされていますが、栽培下でもあまり大きくならずごく小型の系統です。

 球体の直径も小さく、花自体も小型です。

 写りがあまりよくないですが、下の写真で他のレブチア・ピグマエアと大きさを比較しました↓

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(左)𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 MN 162、(右)𝑹. 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 '𝒉𝒂𝒂𝒈𝒆𝒊 ssp. 𝒆𝒍𝒆𝒈𝒂𝒏𝒕𝒖𝒍𝒂' RH 1313

 どうでしょう?

 比べてみると花の直径は2倍近く異なります。球体の直径にはそこまでの差異はありません。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 '𝒉𝒂𝒂𝒈𝒆𝒊 ssp. 𝒆𝒍𝒆𝒈𝒂𝒏𝒕𝒖𝒍𝒂' RH 1313 [Argentina. Jujuy: El Aguilar, alt. 3,750 m]

 大きさの違いに加えて、RH 1313の花は構造自体もやや違います。

 RH 1313の花は花びらが水平近くまで開閉します。他のレブチア・ピグマエアの花は何系統も見ていますが、すべての系統が水平近くまで花びらが開く訳ではありません。

 加えて、RH 1313の花では、咲き始めに顕著に雌しべが突出します。他のレブチア・ピグマエアの花は雄しべと雌しべが同じタイミングで伸びて、雌しべの柱頭と雄しべの葯が触れそうになります。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 '𝒉𝒂𝒂𝒈𝒆𝒊 ssp. 𝒆𝒍𝒆𝒈𝒂𝒏𝒕𝒖𝒍𝒂' RH 1313 [Argentina. Jujuy: El Aguilar, alt. 3,750 m]

 レブチア・ピグマエアとされる他の系統でも、このような小型の系統を見ます。

 別種かどうかは判断できませんが、育てて比較してみたら面白い発見があるかもしれません。

レブチア・ピグマエアの自生地の写真

 最後に、レブチア・ピグマエアの自生地の花の画像を見つけたので、少し張ります。

 花は小さいですが、荒地にピョコッと鮮やかな色の花を見せる姿はとても可愛らしいです。

 アンデスの高山に咲く妖精のような花を想像して、レブチア・ピグマエアを栽培してみませんか?

 今回はここまでです。

 似ている系統を紹介した、ややマニアックな紹介だったかもしれません。

 レブチアの開花写真はまだありますので、この調子でまだ1、2回は紹介できるかな?と思います。

栽培について

 レブチアは春から秋にかけて成長するサボテンです。春は最高気温が20℃を超え始めると成長を開始します。高山に生えるためか、日本の低地の夏には成長を止めることもあります。しかし、基本的には頑丈なサボテンで育てやすいです。

 春から秋は風通しと日当たりの良い場所に置き、表土が乾いて3~7日してからたっぷり水をやる管理でうまく育ちます。夏の暑い時は日陰の風通しの良い場所で栽培した方がよい時もあります (当方では通年同じ場所で育てています)。逆に、日当たりと風通しが悪くて球体が徒長し、場合によっては腐ることもあるので、そういう場合は日当たりと風通しの良い場所へ移動させるとよいでしょう。

 また、レブチア・ピグマエアのように根がニンジンのように太る種類がありますが、そのような種類は水やりの頻度を減らすとうまく育つ場合があります。

 冬は休眠期で日当たり良く雨がかからない場所で管理しましょう。冬もごく少量、水やりをする人もいますが、当方では完全に断水しています (球体がかなり縮みますが、春になると水を吸って膨らみます)。寒さには-5℃ほどまでは耐えるようです。

種の特徴

  (後日記述)