tawashiatsume

植物、主にサボテン・多肉植物。時々登山、時々お酒。

南米アンデス山脈に咲く小型の花サボテン、レブチア その4

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𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒉𝒆𝒓𝒕𝒖𝒔𝒊𝒊 JD 330 [Bolivia. Chuquisaca: Cerro Cara-cara, alt. 2,800 m]

 我が家で4月から咲き始めたレブチア達も、6月に入って何種類か咲いた後、花のシーズンの終わりを迎えました。

 約2ヶ月の間、色とりどりの花を見せてくれて、毎日のように目を楽しませてくれた小さいサボテン達に感謝です。

 ↓↓前回の記事はこちら↓↓↓

 彼らの故郷は南米アンデス山脈の高山帯なので、成長期は夜の気温が下がる春と秋です。日本の低地の夏は蒸し暑いためか、あまり成長しません。

 この記事を書いている頃はまだ成長していますが、夜の気温が下がらず日射も減ってしまうために、球体は大きくなれどトゲはあまり発達しません。

 レブチアは頑丈な種類が多く、蒸し暑い夏でも水やりを控えめにすれば腐ったり枯れたりすることはほとんどないので、その点はとても優れた種類です。

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𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒖𝒍𝒄𝒉𝒓𝒂 VZ 159 [Bolivia. Chuquisaca: Sucre, E of Romeral, Cerro Huayquita, alt. 3,109 m]

 そうそう、何種類かのレブチアは種を付けてくれました。6月中旬から下旬にかけて、トウモロコシ1粒ほどの大きさの果実が熟してポロっととれ、我が家ではその後、夏に向かって徐々に球体の生育が緩慢になっていきます。

 自生地では夏をどうやって過ごしているのでしょうか。

 自生地の写真で、岩の隙間や低灌木の下で小さな球体をより一層しぼませて、半分土に埋もれながら生えている姿をみたことがあります。

 さて、前置きがやや長くなりましたが、今回もいくつか紹介します。

紫がかった小さな球体からかわいい花

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 AW 29 [Argentina. Jujuy: La Quiaca to Tafna, alt. 3,000 m]

 もう何回も紹介している𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 レブチア・ピグマエアという種類。

 花色、球体の大きさにバリエーションがあり、系統ごとに栽培して色々な姿を見るのが面白いので、個人的には好きな種類です。

100系統くらい持っていても飽きないんじゃないかな。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 AW 29 [Argentina. Jujuy: La Quiaca to Tafna, alt. 3,000 m]

 この系統は球体がチャーミングで、他の系統より小さめで紫色を帯びた濃い緑色の球体をしています。

 人によっては虫のようなグロテスクな印象を持たれるかもしれません。

 でも、そんな奇妙な見た目の球体から、春にはキレイでかわいい花をブワッと咲かせるので、そのギャップには驚かされます。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒚𝒈𝒎𝒂𝒆𝒂 AW 29 [Argentina. Jujuy: La Quiaca to Tafna, alt. 3,000 m]
 この系統は、AW 29 [Argentina. Jujuy: La Quiaca to Tafna, alt. 3,000 m]というフィールドナンバーがついた系統で、今は輸入が大変になりあまり出回らなくなりました。
 そもそも日本の栽培家は、欧米の栽培家と違ってフィールドナンバーや産地情報に興味がないようなので、系統がはっきりしたレブチア・ピグマエアを集めるのは日本では中々大変です (フィールドナンバー等が付属していても記録しない人が多い)。

 自生地から採取されて栽培する過程で本当に交雑していないかとか、そこら辺もあやしいのでフィールドナンバーが全てではないのですが、それでもフィールドナンバーがあるかないかでは、得られる情報にかなりの差があると思います。

球体に張り付く虫のようなトゲがチャーミング

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𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒖𝒍𝒄𝒉𝒓𝒂 VZ 159 [Bolivia. Chuquisaca: Sucre, E of Romeral, Cerro Huayquita, alt. 3,109 m]

 次は、鮮やかな赤紫色の花がまぶしい種類。

 球体に張り付くように付くトゲは、小さなクモを思わせる見た目で、花がない時期でも球体を見ていて飽きません。

 トゲは痛くないので、植え替え時も扱いやすい優良なサボテン。

 花よし、球体よし、取り扱いやすい、と非の打ちどころがないような種類です。

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𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒖𝒍𝒄𝒉𝒓𝒂 VZ 159 [Bolivia. Chuquisaca: Sucre, E of Romeral, Cerro Huayquita, alt. 3,109 m]

 花をもう少しよく見てみましょう。

 金属光沢のある花びらはいかにも𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂という趣があります。色も赤紫と定番の色です。

 しかし、花の中心をよく見ると若干色が薄くて黄色っぽいです。これは光の加減ではなく、実際に赤紫色にほんのりグラデーションが入っています。

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𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒖𝒍𝒄𝒉𝒓𝒂 VZ 159 [Bolivia. Chuquisaca: Sucre, E of Romeral, Cerro Huayquita, alt. 3,109 m]

 このサボテンは、𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒑𝒖𝒍𝒄𝒉𝒓𝒂 スルコレブチア・プルクラという種類で、VZ 159 [Bolivia. Chuquisaca: Sucre, E of Romeral, Cerro Huayquita, alt. 3,109 m]というフィールドナンバーがついています。

 実は、このVZ 159というナンバーの系統は花の色の個体差が大きいらしく、写真のようなほぼ赤紫色一色の花から、より赤っぽくなる花、赤紫色の花で中心が黄色になる花と、系統内で様々な花色が見られるようです。

 もし、VZ 159という系統の種が流通していましたら是非まいて育ててみてください。親株になった時、様々な色の花が咲いて驚くことでしょう。

ミカンを連想させるオレンジ単色の花

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒇𝒊𝒆𝒃𝒓𝒊𝒈𝒊𝒊 '𝒎𝒖𝒔𝒄𝒖𝒍𝒂' KK 842 [Bolivia. Tarija: Piedra Larga, alt. 2,500 m]

 今度はオレンジ単色の花と、白いトゲが印象的な種類です。

 𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒇𝒊𝒆𝒃𝒓𝒊𝒈𝒊𝒊 '𝒎𝒖𝒔𝒄𝒖𝒍𝒂' レブチア・ムスクラという種類ですが、レブチア・フィエブリギーに統合される見解もあります。フィールドナンバーは、KK 842 [Bolivia. Tarija: Piedra Larga, alt. 2,500 m]です。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒇𝒊𝒆𝒃𝒓𝒊𝒈𝒊𝒊 '𝒎𝒖𝒔𝒄𝒖𝒍𝒂' KK 842 [Bolivia. Tarija: Piedra Larga, alt. 2,500 m]

 花もキレイですが、この種類の特徴は球体に密生する白いトゲでしょう。

 白いトゲが密生する種類は多いですが、この種類は特にトゲが柔らかく、ヒトの眉毛ほどの感触です。他の種類は、少し硬い髪の毛から、ゴワゴワしたタワシのような感触になることが多いので、この感触は珍しく個人的にはとても興味深かったです。

 𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒎𝒖𝒔𝒄𝒖𝒍𝒂という種類、もしくはKK 842という系統を見かけたら是非育てて触ってみてください。

折り紙のような繊細な印象の花

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𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒉𝒆𝒓𝒕𝒖𝒔𝒊𝒊 JD 330 [Bolivia. Chuquisaca: Cerro Cara-cara, alt. 2,800 m]

 軽い赤紫色の花で、中心部にかけて白くグラデーションがかかる花です。多くの人を一目で魅了しそうなとても美しい花です。

 去年の開花写真をすでにブログであげた記憶がありますが、今年もキレイだったので写真に撮って紹介します。

 今年は去年に比べて花の色が若干薄い気がしますが、それもまたきれいに見えますね (他の南米サボテンの種類でも、花色が去年より薄かった種類があったので偶然ではないかも?)。

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𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒉𝒆𝒓𝒕𝒖𝒔𝒊𝒊 JD 330 [Bolivia. Chuquisaca: Cerro Cara-cara, alt. 2,800 m]

 中心部から辺縁に向かって、白から薄い赤紫色へと徐々に変化する花びらを見て、折り紙で作った花のようだと思いました。

 濃い赤紫色のメタリックな光沢のある花もキレイですが、年によって印象が異なる花が見れて興味深いです。

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𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒉𝒆𝒓𝒕𝒖𝒔𝒊𝒊 JD 330 [Bolivia. Chuquisaca: Cerro Cara-cara, alt. 2,800 m]

 この種類は、𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒉𝒆𝒓𝒕𝒖𝒔𝒊𝒊 スルコレブチア・ヘルツシーという種類で、キレイな花から紹介しましたが、一番の特徴はモジャモジャの髪の毛のようなトゲなのです。

 花に隠れてトゲが見えませんでしたが、ひょいと花の後ろを覗いてみると白くて長いトゲが沢山生えているのが見えます。このトゲもサボテン愛好家の中では人気の理由の一つです。

 白いトゲはややウェーブがかかり、長さは3、4 cmに達します。感触は意外とゴワゴワしていて、とても硬い白髪という感じです。柔らかそうに見えますが、さほど柔らかくありません。風でなびくこともほぼないです。

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𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒉𝒆𝒓𝒕𝒖𝒔𝒊𝒊 JD 330 [Bolivia. Chuquisaca: Cerro Cara-cara, alt. 2,800 m]

 ウンチクを少しだけ。

 写真の株は、JD 330 [Bolivia. Chuquisaca: Cerro Cara-cara, alt. 2,800 m]というフィールドナンバーがついています。これは、2001年にArandiaさんとRovidaさんという方が𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒉𝒆𝒓𝒕𝒖𝒔𝒊𝒊を最初に発見し、それをKarel Knizeさん (南米のサボテン業者、故人)とJohn Donaldさん (𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂の研究家、フィールドナンバーはJD)にそれぞれ渡したという話です (Cactus World The Journal of the British Cactus & Succulent Society  September 2006 Vol. 24 N° 3,  (p.109-113)を参照 )。
 𝑺𝒖𝒍𝒄𝒐𝒓𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒉𝒆𝒓𝒕𝒖𝒔𝒊𝒊の最初に発見されたオリジナルの系統の一つが、JD 330という系統のようです (Karel Knizeの方は、KK 2005というナンバー)。つまり、最初に発見された系統の一つということで、感慨深くなりました。

 サボテン発見の歴史を紐解きながら、その種類周りの情報を調べるのもマニアックな醍醐味の一つだと思います。

一見、普通の赤い花のような種類、、、

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 ssp. 𝒌𝒖𝒑𝒑𝒆𝒓𝒊𝒂𝒏𝒂 '𝒂𝒍𝒃𝒊𝒂𝒓𝒆𝒐𝒍𝒂𝒕𝒂' FR 761 [Bolivia. Tarija: Padcaya]

 最後に紹介する種類は、紅という言葉が似合うような色の花。

 𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒂𝒍𝒃𝒊𝒂𝒓𝒆𝒐𝒍𝒂𝒕𝒂 レブチア・アルビアレオラータという種類ですが、𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 ssp. 𝒌𝒖𝒑𝒑𝒆𝒓𝒊𝒂𝒏𝒂 レブチア・デミヌタのクッペリアナ亜種と同じ種類とする学者もいます。

 フィールドナンバーは、FR 761 [Bolivia. Tarija: Padcaya]

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 ssp. 𝒌𝒖𝒑𝒑𝒆𝒓𝒊𝒂𝒏𝒂 '𝒂𝒍𝒃𝒊𝒂𝒓𝒆𝒐𝒍𝒂𝒕𝒂' FR 761 [Bolivia. Tarija: Padcaya]

 一見、ただの赤い花のようですが、花びらをよ~く見るとキラキラ光っています。

 光にあたると、あたかもラメが塗ってあるかのように花びらが少しだけ黄色く光ります。

 始めは花粉が花びらについたのかと思いましたが、葯から花粉が出ていない花でもキラキラ輝いていたので、元々の性質だと判断しました。

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𝑹𝒆𝒃𝒖𝒕𝒊𝒂 𝒅𝒆𝒎𝒊𝒏𝒖𝒕𝒂 ssp. 𝒌𝒖𝒑𝒑𝒆𝒓𝒊𝒂𝒏𝒂 '𝒂𝒍𝒃𝒊𝒂𝒓𝒆𝒐𝒍𝒂𝒕𝒂' FR 761 [Bolivia. Tarija: Padcaya]

 花を眺めていると色々な発見があります。

 2色のグラデーションが花びらにかかっていたり、花びらに光る構造があったりと、様々です。

 レブチアの仲間は花色が多様であるとともに、複数の色が混ざったような色の花が多いので、ことさら観察が面白いものです。

 レブチアの原種を元に交配をしたら面白いのではないだろうかとよく思いますが、自分でもまだ試していません。

 レブチアは、単純に育てるもよし、色々交配して様々な色の花を楽しむのもよしと、非常に優れたサボテンです。

栽培について

 レブチアは春から秋にかけて成長するサボテンです。春は最高気温が20℃を超え始めると成長を開始します。高山に生えるためか、日本の低地の夏には成長を止めることもあります。しかし、基本的には頑丈なサボテンで育てやすいです。

 春から秋は風通しと日当たりの良い場所に置き、表土が乾いて3~7日してからたっぷり水をやる管理でうまく育ちます。夏の暑い時は日陰の風通しの良い場所で栽培した方がよい時もあります (当方では通年同じ場所で育てています)。逆に、日当たりと風通しが悪くて球体が徒長し、場合によっては腐ることもあるので、そういう場合は日当たりと風通しの良い場所へ移動させるとよいでしょう。

 また、スルコレブチアのように根がニンジンのように太る種類がありますが、そのような種類は水やりの頻度を減らすとうまく育つ場合があります。

 冬は休眠期で日当たり良く雨がかからない場所で管理しましょう。冬もごく少量、水やりをする人もいますが、当方では完全に断水しています (球体がかなり縮みますが、春になると水を吸って膨らみます)。寒さには-5℃ほどまでは耐えるようです。

種の特徴

 (後日記述)